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2025.03.25 政策研究

第60回 組織性(その6):目的なき組織

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因果ループ

  ワイクによれば、変数と変数の因果関係を描いた因果マップ(cause map)が重要である。因果関係は、通常は矢印(「→」)で描かれる。出ていく矢印しかなければ独立(independent)変数、入ってくる矢印しかなければ従属(dependent)変数、出ていく矢印と入ってくる矢印の両方があれば相互依存(interdependent)変数、矢印がなければ無関連(irrelevant)変数、といえる。変数間の矢印である因果回路(causal circuit)には、増加する正のものと、減少する負のものと、増減しないものとがある。統計分析・パス解析やネットワーク分析の結果として示される相関図は、未知だった因果マップを、分析で解明したものであろう。
  そのうち、ある変数から出発して、矢印を順々にたどっていき、出発点の変数に戻る経路(path)があれば、因果ループ(causal loop)が存在する。つまり、最初の変数は再生産が可能であり、最初の変数が資源であるとすれば資源循環が成立する。この因果ループの中の因果回路の増減効果を集積すると、因果ループが安定するときと不安定のときとがある。つまり、ある変数が変動したときに、逸脱増幅(deviation-amplifying)をすれば因果ループは不安定になる。つまり、縮小再生産又は拡大再生産が続き、因果ループが壊れるまで止まらない。あるいは、因果ループが壊れることによって、逸脱増幅は終わるともいえるが、そのとき因果ループが残らないということである。
 ある変数が変動したときに、逸脱減衰(deviation-counteracting)すれば、因果ループは安定する。つまり、縮小すればどこかで反動が起きて拡大に向かい、拡大してもどこかで反転が起きて縮小に向かう、という波動循環である。しばしば、組織は拡大を「成長」として望ましいと考えるので、ちょっとの増加にすぐにブレーキがかかっては、いつまでたっても「成長」しない「定常」=「ゼロ成長」で困る。むしろ、拡大が拡大を生むような拡大再生産を「好循環」と考えがちである。そもそも、ちょっとした変化の段階で、すぐにそれを打ち消す逸脱減衰が生じていれば、新しいものはすぐに消去されて、全く生み出されない。いわば、「正のフィードバック」なくして、新しい組織は存在しえない。例えるならば、赤ちゃんから人間の細胞はどんどん増殖(肥大化)していく。
 しかし、一般に環境や資源賦存が有限である以上、組織の無限の拡大は自己破壊的でもある。ある程度の段階で、逸脱減衰のブレーキがかかることが期待されるわけである。いわば、ある程度の段階で「負のフィードバック」が埋め込まれていなければ、組織として安定しない。例えるならば、人間の成人の細胞は、入れ替わるが無限に増殖するわけではない。また、拡大再生産は、善の再生産である好循環とは限らず、むしろ、悪の再生産である悪循環のこともある。例えるならば、がん細胞のようなものである。また、逸脱増幅は、減少を始めるといつまでも減少を続けるという意味での悪循環のこともある。例えるならば、がんによる激やせのようなものである。

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