2025.03.25 政策研究
第20回 「メディア」「世論」「情報」「データ」と議会(議員)
データ取扱いの留意点
データ(数字)を見るときには、どのようなデータなのかを考えることが重要です。ジョージナ・スタージ(Georgina Sturge)は、何かを比べるときは、別の何かと関連付けることが役立つ場合が多いといいます。経済学者たちが国同士を比較するとき、彼らはただGOP(収入から支出を引いたもの)を見るのではなく、人口と関連付けられている「1人当たりGOP」も見るといいます。これは相対的な富を示す上でGOPより優れた指標です。なぜなら、人口が多い国では総じて経済規模も大きく、それによって生じる統計処理上のゆがみ、つまり「バイアス」を、1人当たりで計算することによって排除できるからだと述べています(スタージ 2024:190)。
私たちはデータを見るとき(=データ分析をするとき)、このことに留意することが求められます。年代別の投票率と投票者が異なるものであることは、被選挙人となった経験のある議員の皆さんには「いわずもなが」でしょう。なお、データは想像力を使って解釈することが重要です。
また、データ分析と信頼、ないしデータ分析と期待の関係については、データ分析で予測を立てても信頼と期待がないと投票という行動につながらないし、やがてデータ分析は不信と失望に陥ってしまいます。データ分析の熟練には多少時間がかかりますが、試行錯誤しながら取り組んでいくことが大切です。その過程で議会は、市民や行政から信頼と期待を得ることになります。議会への信頼と期待は、データ分析の実践から始まります。
データと「情報」「政策判断の基礎」「政策の推進・抑制等の要因」
データには、「良いデータ(データとして良いデータ)」と「悪いデータ(データとして悪いデータ)」があります。データを「分析」することで、人が解釈可能な「情報」となります。「良いデータ」から生まれた「情報」は、「政策判断の基礎」となります。「悪いデータ」から生まれた「情報」は、「政策判断の基礎」になりえません。「政策判断の基礎」は、「政策の結果の予測」につながり、「政策の推進・抑制等の要因(意思決定の要因)」となります。「政策判断の基礎」となりえない情報は、「政策の結果の予測」につながらず、「政策の推進・抑制等の要因(意思決定の要因)」となりえません(表3参照)。
出典:筆者作成
表3 データと「情報」「政策判断の基礎」「政策の推進・抑制等の要因」