2025.03.10 議会運営
第97回 100条委員会における調査
秘密会と非公開の会議の大きな違いは、会議における審査状況を外部に漏えいした場合の責任の違いである。
秘密会における秘密性のある事項を外部に漏えいした場合は、漏えいした委員は秘密漏えいに該当し、法134条における懲罰の対象となる場合がある。
【法134条】
① 普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる。
対して非公開の会議の場合は、そこに参加した議員が会議の情報を第三者に漏えいしても、秘密漏えいに該当せず、懲罰の対象とならない。議員としての政治倫理に反するものとして事実上の取扱いである辞職勧告決議等の対応しかとりえない。
100条調査権には、①目的上の制約、②司法権との関係による限界、③検察権との関係による限界、④執行機関との関係による限界、⑤基本的人権との関係による限界がある。
100条調査を終了した後、調査の状況においては対象案件に対する違法な行為又は不適当な行為が発見される場合がある。
この場合における100条調査の限界としては、刑法上の違法行為に対して100条調査に基づき議会が告発することはできない。そもそも議会は地方公共団体の一機関であり、法人の代表者でないため告発する権限を有することができないこと、さらに刑法上の告訴は被害者本人又は被害者の法定代理人しか原則として行うことができない。
民法上の不法行為については当事者適格があるかどうかということになるが、第三者である議会又は議員が当事者適格を有すると考えることは難しいことから、100条調査において違法な行為が発見されたとしても、原則として告発することは難しいと考える。
100条調査における告発は、告発する権限を本来有しない議会に、100条調査を行う上で一定の場合に法100条9項に基づき例外的に告発の権限を付与したものであるといえる。
【法100条】
⑨ 議会は、選挙人その他の関係人が、第3項又は第7項の罪を犯したものと認めるときは、告発しなければならない。但し、虚偽の陳述をした選挙人その他の関係人が、議会の調査が終了した旨の議決がある前に自白したときは、告発しないことができる。
③ 第1項後段の規定により出頭又は記録の提出の請求を受けた選挙人その他の関係人が、正当の理由がないのに、議会に出頭せず若しくは記録を提出しないとき又は証言を拒んだときは、6箇月以下の禁錮又は10万円以下の罰金に処する。
⑦ 第2項において準用する民事訴訟に関する法令の規定により宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をしたときは、これを3箇月以上5年以下の禁錮に処する。
なお、一定の場合とは、①選挙人その他の関係人が正当な理由なく議会に出頭しない場合、②選挙人その他の関係人が正当な理由なく議会に記録を提出しない場合、③選挙人その他の関係人が正当な理由なく証言を拒絶した場合、④宣誓した選挙人その他の関係人が虚偽の陳述をした場合である。
100条調査終了後に対象となった調査事件に対して議会ができることは、調査に基づき議会としての調査に対する意思をまとめ、解決又は再発防止のための提言をすることである。その提言等は法的強制力を有さず、事実上の効力しか有さない。そのため、本問におけるように住民の代表機関である議会としての意思を無視し、自分の正当性を述べ、何ら対応しないこともありえる。これらの対応には、選挙で住民意思が表明されることによりなされるほかないといえる。
100条調査は、地方公共団体の議会が唯一強制力を有しながら告発する権限まで付与された強力な権限であるが、実務上は執行機関に対して強制力まで有するものではないため、長の対応によってはその調査結果が活かしきれないことがあることに留意を要する。