2025.03.10 議会運営
第97回 100条委員会における調査
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
100条委員会における調査
長が職員に対するパワハラを行ったことや、公益通報制度に通報した通報者を特定したこと、業者との間で不適切な金品の授受があったとの報道があったが、それについて長はそのような事実はなく適法な行為しか行っていないと発言した。この発言に疑問を持った議会が100条調査を行うことは可能か。また、調査を行うに当たり、100条委員会を適宜、秘密会又は非公開とした場合に、どのような取扱いの違いがあるのか。さらに、100条調査を終了した後、長の違法又は不適当な行為に対して、議会として行うことができる限界はどこまでか。
100条調査権とは、地方自治法(以下「法」という)100条に基づき地方公共団体の事務に関する調査を行い、調査を行うに当たって特に必要があると認めるときに選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができ、正当の理由がないのに出頭や記録の提出を拒まれたり、虚偽の陳述が行われないよう罰則による担保が設けられている調査権をいう。
【法100条】
① 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあつては労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあつては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の調査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。次項において同じ。)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
100条調査は地方公共団体の事務に関する調査を行うため、本問におけるように長のパワハラ行為や業者との不適切な金品の授受等の疑いのある件は、地方公共団体の事務に属すると考えられるため、100条調査を行うことは可能である。
なお、地方公共団体の事務かどうかの問題となりやすいのは、地方公共団体が補助金や支出金を出した団体に対する調査であるが、一義的には100条調査を行う地方公共団体の議会の判断となり、最終的には裁判所の判断となる。