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2025.02.25 政策研究

第59回 組織性(その5):組織境界

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組織の内実とは何か

 構成員Aは、組織Xから誘因を提供され、それに対して貢献を行う。では、その組織Xとは何者なのだろうか。実際には、組織Xは、構成員B、C、D、E……から貢献された様々な資源をもとに構成員Aに対して誘因を提供する。例えば、給料をAは受けるが、その資金源は、その他の構成員B、C、D、E……たちの、何らかの活動によって調達されたものである。ということは、B、C、D、E……たちも、何らかの活動という貢献をしているのだから、別の誘因を受け取っていることになる。
 このように、組織の実態は堂々巡りである。Aにとっては、A以外の構成員の諸活動からなるのが組織であるから、組織にはAの諸活動は含まれない。では、Bにとってはどうかというと、組織にはBの諸活動は含まれない。このように、一人ひとりを検討していくと、結局、組織を構成する個人の諸活動は全く存在しない。組織は、Aの活動でも、Bの活動でも、Cの活動でも、Dの活動でも、Eの活動でも、ない。つまり、誰の活動でもない。組織に人間個人であるA、B、C、D、E……が含まれないだけでなく、それらの人間の諸活動も含まれない。組織とは、自分以外の人間の諸活動が意識的に調整されて体系となっているだろう、という共同予測又は共同幻想である。ただ、その共同予測・共同幻想が共有される限りにおいて、各人は諸活動を貢献するので、本当に諸活動が意識的に調整されてしまう。
 組織は空洞である。強固に見える自治体組織も、構成員から貢献(資源)の提供を受けなければ、直ちに崩壊する。そして、誘因を提供できない組織は、貢献を得ることはできないのだから、存続する意味もない。行政は、理屈上は、誘因を提供しないでも、貢献を得ることで存続してしまうこともある。しかし、そのときには、何のために自治体組織は存在するのか、目的が問われることになろう。


(1) C・I・バーナード著、山本安次郎ほか訳『新訳 経営者の役割』(ダイヤモンド社、1968年)、チェスター・I・バーナード著、 飯野春樹監訳、日本バーナード協会訳『組織と管理』(文眞堂、1991年)、飯野春樹『バーナード組織論研究』(文眞堂、1992年)、経営学史学会監修、藤井一弘編著『バーナード』(文眞堂、2011年)、O・E・ウィリアムソン編、飯野春樹監訳『現代組織論とバーナード』(文眞堂、1997年)、高橋伸夫『組織の思想史』(日本経済新聞出版、2025年)、高尾義明『組織論の名著30』(筑摩新書、2024年)、田尾雅夫『現代組織論』(勁草書房、2012年)、占部都美『近代組織論〔Ⅰ〕バーナード=サイモン』(白桃書房、1974年)、丸山祐一『バーナードの組織理論と方法』(日本経済評論社、2006年)
 

 

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