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2025.02.25 政策研究

第59回 組織性(その5):組織境界

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組織間と組織内の相対性

 もっとも、意識的な調整活動の外延は広い。例えば、自治体から請負・委託を受ける民間事業者は、自治体との資源の循環活動をしている。端的にいえば、自治体から財源提供を受けて、人員や物資を自治体に提供する。この取引活動において、自治体は民間事業者に対して、意識的な調整活動をしている。つまり、仕様書を設定し、入札などを行い、契約を結び、定期的に協議し、臨機応変に要望や不満を伝え、中間検査や最終検査を行う。自治体は、請負・委託事業者に対して指揮監督関係はないとしても、官公需の発注者として影響力を持つ。住民のために、適切な財・サービスの提供を受けられるように、事業者に対して意識的な調整活動をするのが、──現実として実行できているかどうかはともかく──原則である。しかし、このときに、請負・委託事業者を含めて、広義の自治体という組織があるとみるかどうかであるが、常識的には組織とはみなさないだろう。通常は、自治体と事業者の関係は、協働関係かもしれないが、組織間関係であり、組織内関係ではない。
 とはいえ、しばしば、自治体が民間事業者と密接な利益共同体を形成することは、あり得なくはない。例えば、自治体は、地元事業者優先の発注政策をとったりするが、これは、地元事業者=自治体連合と、区域外事業者との間で、境界線が引かれていることになる。いわゆる、「地域経営」の発想である。自治体と地元事業者は、全体として、地域経営体という組織なのである。あるいは、自治体は民間事業者の「いいなり」になっていることもあろう。例えば、土木建設事業における「談合」とか、情報システム産業における「ベンダーロックイン」などである。
 そして、組織間関係の場合には、意識的な調整活動をする主体が、常識的にもたくさんある。例えば、自治体と民間事業者は、それぞれが、意識的に調整活動をする調整する側である。意識的に調整する側の自治体から見れば、民間事業者は調整される側である。同時に、意識的に調整する側の民間事業者から見れば、自治体は調整される側である。つまり、相互に、調整し、調整される、関係にある。だからこそ、組織間関係ということができる。
 しかし、このような相互に意識的に調整活動をする関係は、常識的な組織の中においても観察される。例えば、財政課と所管課とは、相互に意識的な調整活動をするだろう。しばしば、財政課が査定権や合議権を背景に、有利のような関係があるが、とはいえ、所管課は財政課を説得して、予算を認めさせようとする調整活動を意識的に行っている。これは、首長など幹部と各部課との関係も同様である。いうまでもなく、首長など幹部は、各部課に対する指揮命令をすることができるので、意識的に調整する側は首長など幹部に限定されるようにも見える。しかし、実際には、ボトムアップの意思決定もあり、各部課が幹部などに上申して、そのまま追認してもらうことも多い。このときには、各部課が、意識的に調整をする側でもある。
 このように自治体という組織を分解していくと、際限なく、小さな組織に分解できてしまう。幹部と各部課の間の調整だけでなく、首長と三役も、部長と課長と係長と各係員も、それぞれに、相互に調整し合う関係なのである。つまり、各個人が、意識的に調整し、調整される組織になる。もっとも、上記のバーナードの定義では、組織には最低限2人が必要ということなので、1人の「原子」までは分解できない。ならば、2人以上の「分子」が、組織の基礎単位ということになる。それでも、自治体は膨大な数の組織複合体になってしまう。

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