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2025.02.25 政策研究

第59回 組織性(その5):組織境界

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経営者の役割

 広い意味での組織である協働体系が成り立つためには、意識的な調整が必要である。意識的な調整を担うのが、経営者の機能であろう。狭い意味の組織とは、協働体系に関して意識的な調整を担う経営幹部集団ということになる。この場合には、組織は、通常理解する組織より、かなり狭い範囲となる。つまり、経営幹部のみが、調整する側としての組織の中核であり、それ以外の人間は、広い意味では協働体系の構成員であるが、調整される側であって、調整する側ではない、ということである。
 前回(第58回)、組織犯罪処罰法に基づいて、団体と区別された組織とは、「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」であることを紹介した。団体には、組織といえる団体と、組織とまではいえない団体があり、両者を区別するのは、指揮命令、任務・役割の遵守、一体的行動、などである。要するに、組織には、指揮命令をして、意識的な調整を行う部分がある。最も狭い意味での組織は、指揮命令をする集団である。そして、常識的な中ぐらいの意味での組織は、指揮命令をする側の指揮命令活動と指揮命令される側の指揮命令された諸活動──指揮命令を受けて任務・役割を守って結果的に調整された諸活動をする人間たちの諸活動──から構成される。
 上記の「保育士確保期成同盟」であれば、狭い意味での組織は、当該同盟事務局ということかもしれない。もっとも、当該同盟事務局も、勝手に調整活動をするわけにはいかないから、自治体A及び自治体Bそれ自体の幹部こそが、期成同盟の経営幹部といえるかもしれない。事務局の職員は首長に対して指揮命令できず、首長が事務局の担当職員に指揮命令するからである。
 しかし、ものは見方であって、意識的な調整活動であるから、指揮命令のように一方的に捉える必要はないかもしれない。「保育士確保期成同盟」事務局の幹部スタッフが、自治体A及び自治体Bの経営幹部たち──正副首長・議員・保育所管系部課長・総務系課長など──の諸力を意識的に調整しているともいえよう。このあたりは、見方・世界観・視点によって相対的・主観的ともいえる。あるいは、実質的な調整権力の所在こそが、経営者機能、ひいては、狭い意味の組織の所在を、客観的に、つまり、当事者ではなく、観察者の主観によって、規定するともいえる。
 自治体は、指揮命令系統があるという意味では、組織である。執行機関は、官僚制の命令一元化原理に立って構成されているので、首長を最高決定者とする組織であろう。しかし、執行機関多元主義や執行機関・議事機関対立主義からすると、他の執行機関や議事機関(議会)は、首長の指揮命令下にはない。そうすると、自治体という地方公共団体は、各機関ごとの組織の集合体ということになる。しかし、バーナード組織論は、組織犯罪団体よりももう少し緩く、意識的な調整活動でよい。その意味では、自治体の各機関は、それぞれに意識的な調整活動をしている。その点では、団体としての自治体は、常識的な感覚に従って、組織といえよう。

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