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2025.02.25 政策研究

第19回 一般質問の作法とチェックポイント②「一般質問前のチェックポイント、一般質問(時)のチェックポイント、一般質問後のチェックポイント」

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一般質問(時)のチェックポイント3!

 土山希美枝は、一般質問で何を問いただし、問題提起したいのかを書き出して整理してみると、その内容は執行機関のあり方をチェックする監査質問と、政策課題やとるべき方策・改善点を提起する政策提案質問に大別できるといいます。そして実際には、一つの質問の中に両方の機能が入っていることが多いのですが、監査機能を持つ部分、政策提案機能を持つ部分について、それぞれ作成に当たって留意したいポイント(「監査質問のポイント」「政策提案質問のポイント」)があるとしています(土山 2014:1)。また、本稿では、これらの「監査質問」と「政策提案質問」にともに必要となる〈「豊かなコミュニケーションが行われたか」「聴雪(雪の気配を感じ取るほどの心静かな心境)のコミュニケーションを実践できたか」〉を三つ目の一般質問のチェックポイントとして考えてみます(図1参照)。
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出典:筆者作成
図1 「監査質問」「政策提案質問」と「質問時の成功条件である
〈豊かなコミュニケーション〉〈聴雪のコミュニケーション〉」の関係


【一般質問(時)のチェックポイント①】監査質問のポイント
 土山は、監査質問や質問の監査機能部分であれば、執行機関が「きちんと」執行しているかどうかを問うことになるとし、「きちんと」しているとは行政運営や事業執行の背景にある、条例等を含む法制に対する遵法性、執行における判断の適正性が確保されていることであると述べています。そして監査質問には、これらのどこが「きちんと」していないかを明確に指摘することが求められるとし、さらに執行機関の内部ルールである要綱が法や条例の趣旨、目指すべき政策目標から見てその規定と運用が適切であるか、国法や国制度をどう解釈しているかといった執行機関の認識や判断も含まれるとしています。そのため、監査質問のためには、制度についての十分な知識、我がまちや他自治体での運用状況の確認、執行のどこに問題があるのかの特定、が必要になることを指摘しています(土山 2014:1-2)。
 なお、監査質問、なかんずく違法や不当ではないかとの質問では、場合によってはリアルないしインターネットの情報に事実関係の未確認や誤情報があることがあります。この点を考慮し、かつ人権を配慮し、質問の「言葉遣い」に留意することが求められます。

【一般質問(時)のチェックポイント②】政策提案質問のポイント
 政策提案は、まず「その課題は(他課題に優先して)自治体として取り組むべき課題なのか」、さらに「その手段はその政策課題の解決策として有効か」いわば「提案の正統性」に納得が得られなければ受け入れられない。資源に制約がある以上、課題として認められることも簡単ではない、と土山は述べています。そして、提案が正統なものとして受け止められても実現するとは限らないとし、そのため提案には「実現可能性」が求められるとしています。我がまちの現状に合った具体的な方法、他市の事例、予算の目途や担当が予想される部局の感触なども重要な情報になってくるだろうとも述べています。また、政策提案質問の主張が通るということは、執行機関の執行のあり方を変えることであり、それもまた壁となりうるし、市(町村都道府県)政にとって新しい政策提案が一度の質問で実現するということはめったにないといってよいといいます。提案を実現しようとすれば、継続して質問を重ねて目標にたどり着けるような戦略の構想が必要となるとし、その第一歩は、その状況が問題であるとの執行部側の認知、共感を得ることであろうと述べています。その認識を手がかりに、次いで「ほかにも課題はある」「良い方法がない」「資源はない」、という障壁を乗り越えていく粘り強さが求められるとの認識を示しています。そのため、政策提案質問には、課題をめぐる情報収集、提起する問題の整理、政策目標の明確化、他市事例や具体的な改善策の提示、予算などへの配慮、行政の政策対応の現状に対する評価、提案実現のための戦略の構想と「今回」の目標が必要となる、と土山は主張しています(土山2014:2)。
 なお、市民は様々な分野でマイノリティ、マジョリティに分かれています。Aという分野ではマイノリティでも、Bという分野ではマジョリティとなっています。このことを踏まえ、課題が課題であるかの判断、提案が有効であるかの判断に当たっては、マイノリティ、マジョリティという両方の市民目線から見る必要があります。

【一般質問(時)のチェックポイント③】豊かなコミュニケーションが行われたか、聴雪のコミュニケーションを実践できたか
 一般質問で、質問者と答弁者の間に豊かなコミュニケーションが展開されれば、たとえ答弁が質問者の意思と異なっていても、その質問は成功であり有意義であるといえます。一般質問で、質問者と答弁者の間に豊かなコミュニケーションが展開されていなければ、その質問は失敗であり残念な時間の経過であるということができます。例えば、質問者がメリットだけをいい、分かっているデメリットをいわず、答弁が質問者の意思どおりとなっても、それは豊かなコミュニケーションが図られた一般質問とはいえません。豊かなコミュニケーションを図るということでは、反問権を認めることも大切です。議員には「聴雪」でのコミュニケーションが求められます。それには、泰然自若(落ち着いていてどんなことにも動じないさま)な姿勢も重要になります。泰然自若な姿勢は、人々に信頼「感」を与えるからです。ただし、いつまでたっても信頼「感」であってはなりません。「豊かなコミュニケーションを行うこと」「聴雪のコミュニケーションを実践すること」で、信頼「感」を「信頼」に高めることが大切です。

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