2025.01.27 政策研究
第58回 組織性(その4):団体・法人・身体・機関
団体=人の結合体
地方自治法制を離れて考えてみよう。ある解説によれば、団体とは、共同の目的を達成するための人の結合体又はその連合体とされている(10)。例えば、破壊活動防止法(4条3項)や、団体規制法(無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律)(4条2項)では、「団体」とは、特定の共同目的を達成するための多数人の継続的結合体又はその連合体をいう。
もっとも、この定義からすると、自治体は団体とはいえないかもしれない。自治体は、特段の特定の共同目的を持っているようにも見えないからである。あるのは、住民福祉の増進という程度で、何でも読み込めるような目的であるし、そもそも、多人数間で特定の共同目的があるようにも見えない。また、多人数の住民が属しているとしても、転入転出が容易であり、継続的な結合体という印象もない。あえていうならば、職員という多人数の継続的結合体に近いだろう。
ある判例によれば、以下のように示されている。「特定の共同目的」としては、多数人の集団に、個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され、又は存在する目的であって、構成員各人が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同の目的があれば足りると解される。また、「結合体」としての多数人の集団の結び付きの強さの程度としては、各構成員がこの共同の目的を達成するためにこれに沿った行動をとり得る関係にあることを要するところ、特定の共同目的が、個々の構成員個人の意思とは離れて独自に形成され、又は存在し、各構成員がこのような共同の目的に沿った行動を行うには、当該集団において、構成単位である個人を離れて組織体としての独自の意思を決定し得ることがその前提となるものであるから、「結合体」というには、そのような組織体としての独自の意思を決定し得るものであることを要するものと解される。したがって、「継続的結合体」とは、多数人の組織体であって、その構成単位である個人を離れて、組織体としての独自の意思を決定し得るもので、相当の期間にわたって存続すべきものをいうと解される(東京地判平成29年9月25日平成27年(行ウ)444号訟務月報66巻8号958頁)。
つまり、団体とは、共同目的があるということよりも、構成員個人と離れて、組織体として独自の意思決定ができることである。これならば、自治体にも当てはまるだろう。ただし、団体と組織体と結合体が言い換えとして定義されており、このように考えると、組織と団体の区別はよく分からない。この点で、自治体(地方公共団体)は、構成員個人──住民であるか職員であるかはここでは問わない──から離れて意思決定できることには違いがないので、団体といえよう。もっとも、構成員各人──住民であるか職員であるかはここでも問わない──が当該集団としての行動をする際の指針となり得ると評価できる程度の特定の共同の目的が、自治体に見られるかは大いに疑問である。ただ、自治体の団体としての意思決定に逆らうと、構成員個人──住民であるか職員であるかはここでも問わない──は制裁され得るという意味で、独自の意思はあるといえなくはない。
もっとも、組織と団体は区別されているときもある。例えば、組織犯罪処罰法(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律)2条1項では、「「団体」とは、共同の目的を有する多数人の継続的結合体であって、その目的又は意思を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体をいう。以下同じ。)により反復して行われるものをいう」とある。つまり、組織とは、「指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動する人の結合体」である。
広義の団体の中には、組織を持たない団体と、組織を持つ団体(組織犯罪処罰法などにいう狭義の団体)とがある。あるいは、組織としての性格を持つ狭義の団体とがある。自治体に転用して考えれば、地方公共団体は、団体であるだけでなく、指揮命令に基づいて行動する組織(執行機関・職員機構など)を持っている、あるいは、指揮命令に基づいて行動する組織の性格を持つことになる。地方公共団体を、多人数の住民の結合体とするならば、組織とは自治体行政組織のことである。地方公共団体を、多人数の職員などの結合体とするならば、同時に指揮命令系統のある組織でもある。