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2025.01.27 政策研究

第18回 一般質問の作法とチェックポイント①「一般質問の作法」

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【一般質問の作法16】一般質問の位置を知る、前例を超える
 一般質問は、議会により形式や持ち時間など運用の違いはありますが、基本的には「全ての議員が、行政(都道府県市町村)に関わる全てのことを問い質(ただ)すことのできる機会」です(参考:「議員は、市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる」(標準市議会会議規則62条))。
 また、一般質問は「一人でも始められる議会改革」です。議会内では、「孤立」し、いまだ「一人ぼっち」であっても改革が進み、成果を上げる可能性があります。そこには、改革意識に燃えた議会事務局職員や行政(首長・職員等)関係者、そして利害関係者や市民、あるいは専門家との連携・協力が必要ですが、諦めなくてもよいのではないでしょうか。
 議員には、より積極的な一般質問の活用が期待されます。所属する委員会の所管範囲だから一般質問はできない(しない)、議会の三役(いわゆる議長・副議長・監査委員)だから一般質問はできない(しない)をいう前例は、議会改革の中で再考することが求められているのかもしれません。

【一般質問の作法17】なるべく反問を認める
 行政(首長・職員)が一般質問のときに出席するのは、市民のために議員と話し合い・訊き合うためです。議員が一方的に質問するだけでは、質問の内容も答弁も深まりません。その意味で、反問権のない一般質問は、答弁の持つ可能性を半減あるいはそれ以上に減じさせているといえるでしょう。質問者は、仮に議会基本条例などに根拠を持つ反問権規定がなくとも、執行部の反問的内容を含めた答弁を是とし、それに対する議員としての答弁ないし再質問をすることが、妥当であると考えるべきです(田中富雄 2018:8)。そのことが、市民の信託に応えることになります。

【一般質問の作法18】再質問の意義、政策の完成度を上げる
 一般質問の「読み原稿」作成時には、想定される再質問についても「読み原稿」を作成しておくことが必要です。ちなみに、答弁する行政側は再質問を想定し、それに対する答弁案を作成しています。それはなぜでしょうか。再質問の想定問答を作成するのは、再質問に抜け目なく答弁できるようにするというだけでなく、そこに取り上げられている政策を様々な角度から点検し、より完成度の高いものにすることができるということがあります(田中富雄 2018:10-11)。質問する議員にとってみても、再質問を検討することを通して、政策を様々な角度から点検し、より完成度の高いものにするという姿勢が求められます。なお、田中富雄(2018)には、30の一般質問(例)について、様々な「事前に想定しておきたい再質問リスト」を載せています。

【一般質問の作法19】再質問を含めて一般質問用の一枚紙をつくっておく、慌てない
 再質問を含めて一般質問用の一枚紙は、つくり見直すことが少なくとも4度は必要となります。1度目は、執行部職員のところへヒアリングに行く前に質問や再質問の一枚紙を作成します。ヒアリングをすれば、答弁の見通しが立ちます。2度目は、その内容を踏まえて質問や再質問の一枚紙を見直します。3度目は、一般質問の「読み原稿」を作成した後です。「読み原稿」を作成することで、それまでの思い違い等を手直しすることができます。その段階で一枚紙を整序するために見直しをします。4度目は、一般質問をする前日や当日です。他の議員の行った類似の質問の答弁内容を踏まえて、一枚紙を見直すことができます。場合によっては、類似の質問者が連続することもありえますが、それでも対応可能な再質問用の一枚紙をつくっておくことは有効と思われます。なお、行政も同じように答弁・再答弁を含めて「答弁案」や「関係資料」の見直しを重ねています。
 一枚紙をつくっておくことは、答弁内容を瞬時に確認することに役立ちます。そうすることで、質問者は慌てなくてすみます。慌てては、時間管理ができず、せっかく準備した質問も無駄になってしまうことがあります。

結び

 本稿では、「一般質問の作法」と、これらに関する事項等について考えてきました。一般質問には、その質問・答弁を通して、市民のために話し合い・訊き合うことが重要です。そのとき、議会関係者(議員・議会事務局職員)と行政(首長をはじめとした執行機関・執行部職員)には、無駄な権力闘争、そして圧力や忖度を防ぐためにも、冷静な話し合い・訊き合いが必要となり、そこには品格・品性の出現である作法が必要となります。

(1) 「八百長」や「学芸会」の言葉については、土山希美枝が、片山善博氏の一般質問を評した、2007年9月18日第18回地方分権改革推進委員会ヒアリングでの発言(第18回地方分権改革推進委員会議事録)を引用しています(7頁及び17頁に「八百長」や「学芸会」についての記述があります)(土山2014a:3、4、土山2014b:1、4)。なお、そのURLは、https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/8418775/www.cao.go.jp/bunken-kaikaku/iinkai/kaisai/dai18/18gijiroku.pdfに変更されています。

■参考文献
◇児山正史(2021a)「影響要因を追加したロジックモデル」佐藤徹編著『エビデンスに基づく自治体政策入門:ロジックモデルの作り方・活かし方』公職研、21〜22頁
◇児山正史(2021b)「仮説としてのロジックモデル」佐藤徹編著『エビデンスに基づく自治体政策入門:ロジックモデルの作り方・活かし方』公職研、22〜23頁
◇児山正史(2021c)「ロジックモデルの概要」佐藤徹編著『エビデンスに基づく自治体政策入門:ロジックモデルの作り方・活かし方』公職研、15〜18頁
◇田中啓(2021)「ロジックモデルの構成要素」佐藤徹編著『エビデンスに基づく自治体政策入門:ロジックモデルの作り方・活かし方』公職研、18〜19頁
◇田中富雄(2015)『一目で伝わる! 公務員の図解で見せる資料のつくり方』学陽書房
◇田中富雄(2018)『実例でわかる! すぐ使える! 公務員の議会答弁の書き方』学陽書房
◇土山希美枝(2014a)「質問力を上げよう 第2回 あなたの一般質問を政策にたどりつかせるための戦略の話」議員NAVI 2014年3月10日号
◇土山希美枝(2014b)「質問力を上げよう 第3回 一般質問を資源として考えよう~『ひとりぼっちの質問』を超えて~」議員NAVI 2014年5月12日号
◇土山希美枝(2021)「ヒロバな議会でいこう 第13回 一般質問を議会の政策資源に ③別海町議会『一般質問検討会議』が示唆すること【前編】」議員NAVI 2021年8月25日号
◇土山希美枝(2022)「ヒロバな議会でいこう 第14回 一般質問を議会の政策資源に ③別海町議会『一般質問検討会議』が示唆すること【後編】』議員NAVI 2022年5月13日号

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