2025.01.27 政策研究
第18回 一般質問の作法とチェックポイント①「一般質問の作法」
【一般質問の作法7】質問のタイミングを計る、質問は数を絞って具体的に、情報の詰め込みすぎはダメ
分かりやすさという意味では、一般質問の時間が限られている以上、許された時間の範囲内で質問の数を適正に絞ることが重要です。現状では、このことはやむをえません(なお、議会改革として一般質問を行う日程(日数と時間)を見直すことが必要な議会もあるでしょう)。したがって、質問をするタイミングを計ることも大切です。例えば、ある政策が必要であると思い政策提言質問をしようと思っても、環境が悪かったり有権者の希望(意識)がなかったり(気づいていなかったり)ということがあるかもしれません。これでは、議会が熱く燃える争点にはなりません。
また、一般質問は別の意味でも数を絞ることが重要です。質問に際し、情報を詰め込みすぎると、とかく質問の内容を分かりづらいものにしてしまいます。意気込んでいると、往々にして情報を詰め込みすぎてしまうものです。注意しましょう。一般質問の数を絞れば、持ち時間を想定した論点の絞り込み、深掘りができ、その帰結として質問への回答が具体的で明確なものになります。
【一般質問の作法8】執行部との事前ヒアリングをする、執行部の反問権を受け入れる
事前ヒアリングは執行部との対話のチャンスです。一般質問の質問・答弁が充実したものとなることは、市民などの利害関係者にも期待されています。一般質問の限られた時間を有効なものとするためには、例外を除き議員には執行部との事前ヒアリング(すり合わせ)が必要なものとなります。どこまでが妥当なすり合わせなのかについては議論があるようですが(例えば、土山 2014a:3)、質問者・答弁者が互いの考えを遠慮なく出し合い、市民のための「話し合い・訊き合い」を踏まえた質問・答弁(再質問・再答弁を含む)であれば、市民から「八百長」や「学芸会」⑴だといわれることもないでしょう。そして、何より質問者・答弁者が互いの質問・答弁について、その背景を含めて合意できなくとも納得あるいは理解できるのではないでしょうか。
また、質問・答弁を充実させるためには、一般質問に対する執行部からの反問権を議会側が受け入れることが求められます。なぜなら、双方向の議論(双方向性のある議論)が生産性を高めるからです。
【一般質問の作法9】主張を相対化する、執行部に時間(期間)を与える、平常時から準備を心がける
議員には、⾃分の主張を相対化して質問することが求められます。具体的には体系性、実現可能性などの視点から⾃分の主張をチェックして質問するということです。そのためには、⾃治基本条例、議会基本条例、総合計画(地域⽣活環境指標、公共施設等配置計画、定員計画、財政計画)、分野別計画(中間計画)、⼈⼝ビジョン・総合戦略、公共施設等総合管理計画、地震や洪水のハザードマップなど⾃治体の基幹となる条例や計画等の中に⾃分の主張の位置付けを確認することで、⾃らの主張の妥当性を改めて確認することができます。また、このように⾃分の主張を相対化して一般質問することは、自己の主張の誤りを正すことができます。
このことは、地域としても業界などの団体としても、⾃分の選挙地盤に関する質問事項を⾃治体の課題全体の中で相対化することを意味します。そうすることで、例えば、政策の段階的導⼊や計画的対応など、より実現可能性と具体性を持った政策提案を⽰すことにつながります。このことに関連して、これまで執⾏部が取り組んでいなかった政策についての⼀般質問を⾏うのであれば、執⾏部が当該提案を政策全体の中で、どのように位置付け、対応していけるのかを⼗分に検討できる時間(期間)を確保した上で、執⾏部の決断を確認することが求められます。もちろん、災害復旧など緊急性のある質問もあるでしょうが、そのときに混乱が起きないように(極力、事がスムーズに運ぶように)、平常時からの準備をする心がけが大切になります。
【一般質問の作法10】政策資源の投⼊可能量を検討する、執行部の持つ行政経営ないし行政運営の課題・悩み・苦しさを知る
一般質問では、政策の実施に必要となる政策資源(人員・組織・財源・施設・権限・情報・時間等)の投⼊可能量についても、議論することが求められます。政策資源の投入可能量を無視した質問や答弁では、画餅に帰すことが少なくありません。
政策の実施に必要となる政策資源の投⼊可能量が分からなければ、その一般質問はややもすると、執行部の持つ行政経営ないし行政運営の課題・悩み・苦しさを無視して、行政を追い詰めているだけかもしれません。そのような質問では、適正な自治体はできません。