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2025.01.27 政策研究

第18回 一般質問の作法とチェックポイント①「一般質問の作法」

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【一般質問の作法5】質問者・答弁者の苦悩とともに生きる
 一般質問では、答弁者の心の内を読むことが大切です。首長と質問者が、選挙やこれまでの一般質問において壮絶なバトルをした経緯がある場合には、質問の良しあしは別にして議論が混乱することがあります。議員にしてみれば、混乱した首長ないしその意向を受けた答弁者の答弁は困りものです。同様に、首長ないしその意向を受けた答弁者にしてみれば、混乱した議員の質問は困りものです。このような場合には、混乱者の意向を理路整然と、かつ穏やかに質問ないし答弁することが大切です。
 ところで、混乱者である首長や議員に対しては、自分が首長や議員になり、混乱者である首長や議員の存在をなくそう、減らそうという議員や職員もいるかもしれません。しかし、その実現には当人を取り巻く環境が許せばという条件がつくことになります。ゆえに、そのことが可能となる環境を満たす人は多くはないことが見込まれます。そこには、事を真摯に考える人であればあるほど苦悩が生じてきます。その苦悩は深いことでしょう。
 このように考えると、極端な言い方をすれば、それでは質問ないし答弁をする人がいなくなってしまいます。人により答弁内容に関する考え方(=政策内容)が、全て一致することは少なくありませんし、むしろその方が多く、それが当たり前であるということを想起すべきです。議員に絞ってみれば、議員は答弁者の苦悩を熟慮することが必要となります。議員には、首長をはじめとする執行部や議員同士の心理的抵抗感や人間関係における葛藤を超克することが求められています。

【一般質問の作法6】分かりやすく質問する、質問にモデルを使う、練った読み原稿を作成する
 一般質問の質問・答弁は、議会と行政の関係者だけではなく、市民やその他の利害関係者にも分かりやすい言葉や分かりやすい資料を用いることが重要です。パネルを用いるときには、図表や箇条書き(田中富雄 2015)を使用することが求められます。
 分かりやすくするためには、モデル(模範・手本)を使用することも一つの方法です。ここでは、その例としてロジックモデルを取り上げます。
 ロジックモデルとは、行政の活動が最終的な成果につながるまでの因果関係を論理的に図式化したものです(田中啓 2021:19)(表参照)。ロジックモデルは、予算などの資源の「投入(インプット)」、行政の「活動(アクティビティ)」、財・サービスの「産出(アウトプット)」、社会状態の変化としての「直接成果(直接アウトカム)」「中間成果(中間アウトカム)」「最終成果(最終アウトカム)」の流れで表します。「直接成果」は「産出」から直接生じる成果、「中間成果」は「直接成果」と「最終成果」の間の成果です。「最終成果」は、「インパクト」とも呼ばれます。また、直接成果、中間成果、最終成果は、「短期的成果」「中期的成果」「長期的成果」と呼ばれることもあります(児山 2021c:15、17)。
 最終成果に影響を与える要因は、自治体の行政の活動に限りません。例えば、国や他の自治体(市町村から見た都道府県など)の行政の活動、民間の活動、景気変動、自然環境、国際関係も影響を与えるかもしれません。また、行政の活動から中間成果までの各項目についても同様のことがいえます。そこで、ロジックモデルの各項目に影響を与える可能性のある他の要因(=「影響要因」)を書き加えることもできます(児山 2021a:21)。
 ロジックモデルは、行政の活動と最終成果の間に「論理的には(理屈の上では)このような関係があるだろう」という「仮説」を示すものです。ロジックモデルを作成するだけでも、行政の活動と最終成果が論理的に結びついているかどうかを評価することができます(このような評価を「セオリー評価」と呼びます)(児山 2021b:22-23)。
 ただし、ロジックモデルはあくまでも「仮説」であり、それ自体は「エビデンス」ではありません。行政の活動と最終成果の間に「仮説」どおりの関係が実際にあるかどうかを検証するためには、指標に関する統計やデータなどの「証拠」を集め、分析する必要があります。「論理(ロジック)」だけでは説得力に限界があります(児山 2021b:23)。
 このようなロジックモデルは一つのモデルですが、これに基づき「読み原稿」や「資料(配布資料やパネル等)」を作成することは、質問者である議員が質問内容(地域問題)について構造的に考えることに役立ちます。このことは、答弁者にとっても分かりやすく、的確な質問であることにつながります。
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出典:筆者が田中啓(2021:19)の「図表1-5 ロジックモデルの構成要素(表型のロジックモデルの例)」から抜粋した。
表 ロジックモデルの例

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