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2024.12.25 政策研究

第17回 議案作成と議案審議─〈議案作成・議案審議〉の前提、議案のチェックポイント、議案審議後の対応策

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【ポイント6】市⺠一⼈ひとりの⽬線に⽴っているか、市民ニーズは多様で変容する
 議員は、市⺠として・市⺠の⽬線で・市⺠の⽴場から事業を考えているでしょうか。そして、市⺠が多様であることを前提とした議論を展開しているでしょうか。市⺠一⼈ひとりはそれぞれに異なる環境で⽣活しています。一つの事業が、ある市⺠にとっては有益であっても、他の市⺠にとっては無益あるいは有害であることも考えられます。議会は、自治体政府政策の事業の受け⼿である市⺠が多様であることを、常に考えていることが大切です。
 また、⾃⼰のライフステージや家族構成の変化により、求められる市民ニーズも変容します。将来の⼈⼝構成や家族構成など社会の動きを踏まえながら、⻑期・中期・短期と様々な時間軸の中で、市⺠の⽬線に⽴ち、地域の将来に思いをはせながら事業を査定する必要があります。そのことは、事業の実施に必要となる人員・組織・財源・施設・権限・情報・時間等の投⼊資源を制御することにもつながります。

【ポイント7】ミニマムであることを確認したか
 政府の実施する事業は、国の事業も⾃治体の事業もミニマムであることが求められ、その確認が必要です。⾃治体が有限の資源で無限とも思えるような市⺠の膨⼤かつ多様なニーズに応えるには、⾃治体の実施する事業は必要最⼩限(ミニマム)であることが必要となります。ミニマムを超えた事業は、必要とされる別の事業を実現するための阻害要因となります。事業作成・事業審議(≒議案作成・議案審議)には、このような事態が発⽣することを防ぐことが求められます。

【ポイント8】事業の特性(複雑性や悪構造性)を踏まえているか
 【ポイント6】でも触れましたが、⾃治体の実施する事業も、総合性、相反性、主観性、動態性などで構成される複雑性や、関係者が多数になることで合意形成が困難性を伴うことになる悪構造性などの特性を持ちます。このような特性を踏まえ、事業の採否を決定する必要があります。
 もし、このような特性を踏まえていないとすれば、ある一つの事業を⾏ったことにより反作⽤が⽣じ、社会が⼤きく混乱することもあります。反作用が起きたときには、速やかな対応が求められます。速やかに対応できなかったことの典型としては、公害問題や薬害問題があります。

【ポイント9】政策体系の中で安定しているか、安定していれば相乗効果も
 その事業は、政策体系あるいは政策集である計画の中で、他の事業との関係が安定しているでしょうか。すなわち、政策体系の中で、その事業がおのずから座り⼼地がよい位置にあるということが確認できるでしょうか。座り⼼地がよい位置にあることは、その事業が相乗効果を持ちうる可能性が⾼いと考えることができます。他方、座り⼼地が悪い、安定していないということは、事業間で事業の効果を打ち消し合ってしまうことが考えられます。それでは、投⼊された人員・組織・財源・施設・権限・情報・時間等の政策資源は無駄に消費されてしまうことになります。

【ポイント10】「時(とき)は今(いま)」といえるか、事業にはタイミングが必要
 事業実施の時期が、様々な事業間の相乗効果を⽣むようなタイミングにあるでしょうか。事業効果を最⼤限に発揮できるようなタイミングで事業を実施することができるでしょうか。これまで先進事例が皆無あるいは少数という事業であれば、合意形成に困難が伴うことで事業開始までに時間を要する事態も考えられます。
 取組みがスタートしている事業であっても、事業が効果を発揮できる時期(期間)が限られている場合もあります。事業が効果を発揮できなくなるまでの間で、最も効果を上げることができるタイミングをとらえることが肝要です。これらのことを⾒越して事業実施のタイミングをとらえることが必要です。

【ポイント11】事業実施に必要な資源を投⼊できるか
 事業を実施するとき、その事業が市⺠や関係者に対する効果を、短期・中期・⻑期と継続的に発揮するためには、人員・組織・財源・施設・権限・情報・時間等の資源が必要になります。例えば、人員では職員数の確保やキーパーソンの確保は可能でしょうか。その確認が求められます。財源は確保できるでしょうか。将来にわたるコストは試算できているでしょうか。その事業の実施が、⾃治体の財政を⼤きく圧迫するようなことはないでしょうか。その事業を⾏うことで、財政指標にどのような影響をもたらすことになるのでしょうか。事業の実施に必要となる予算を⽰すときには、将来にわたる維持費等のコストの概算額も含めて明⽰することが求められます。
 このことは、議案(=政策)は実践可能でなければならないことを示しています。そうでなければ、その政策は早期に修正が行われたり、修正しない場合は無視されることもあるでしょう。
 

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