地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2024.12.25 政策研究

第17回 議案作成と議案審議─〈議案作成・議案審議〉の前提、議案のチェックポイント、議案審議後の対応策

LINEで送る


【ポイント3】〈議案作成・議案審議〉のための議員・議会の心得、話し合い〈訊(き)き合い・聴き合い〉、共有
 議員は、視察や研修に参加することも多いことでしょう。委員会や会派で参加することもあるでしょうし、議員個人で参加することも少なくないかもしれません。ここでは、個人や少人数で視察や研修に参加したときの心得について考えます。
 まず、視察や研修に参加したら、その内容を関係者に伝え、関係者の感触を得ることが大切です。内容を関係者に伝えるには、視察や研修の資料を提示するとともに、参加した議員の感触を説明し、意見交換をすることが大切です。ここでいう関係者には、視察や研修のテーマを所管する委員会のメンバーや執行部の職員が挙げられます。
 なお、視察や研修の参加前に、どの自治体に視察に行ったら有益な視察ができるかや、どのような研修に参加したら有効な研修になりそうかを、市民・他の議員・議会事務局職員・執行部職員・専門家等から、又は新聞・雑誌・論文・SNSから把握し、前段に掲げた関係者(テーマを所管する委員会メンバーや執行部職員)と議論(話し合い〈訊き合い・聴き合い〉)しておくことがよいでしょう。
 これらのことは、地域の人々(市民・議員・首長・職員等)が問題意識を共有できる場となります。議案作成・議案審議を念頭に勉強会、研究会、研修などを行うことは、議員の知見と労力を地域の人々の共有資源とすることです。そこで蓄積した知識・情報をさらに活かすことは、議員にとっても有意義です。議員に求められる勇気と仲間づくりにもつながります。なぜなら、勉強会、研究会、研修などを行うと仲間が増え、勇気が湧いてくることも少なくないからです。

【ポイント4】行政のスケジュールを踏まえているか
 議案が提出されてからでは間に合わない、意見を出そうにも意見が出せない・まとまらないということがあります。計画や重要な政策(施策・事業)については、1~3年前ぐらいから一般質問で取り上げるなどして、きちんと自分の意思を表明しておくことが求められます。他の議員と連携して取り上げることも大切です。議会ないし委員会等で取り上げ、検討しておくことも重要です。そのときは、議会事務局職員を活用して、過去の議事録を遡って確認することもできます。そうすれば、過去の答弁の一貫性や変容を見ることもできます。
 なお、執行部は議会のこれらの取組み(=早い段階での一般質問)には、急に出てきた質問・意見に対してよりも真摯に応ずることができるのではないでしょうか。作業が本格的に進んでしまっていると、「本当はそうだよな~」と思っていても、後戻りには様々な課題・負荷(例えば、期限の延長ができないけれど期限が迫っている、職員にこれ以上負担をかけられない)がかかることから、真摯に応じることが難しくなるからです。

【ポイント5】必要な知識・情報等があると見込まれるか
 議案作成・議案審議には、その実施や評価と同じように人(質と量)・財源(予算)・情報・権限・同意・時間等の様々な政策資源が必要となります。特に、議案作成・議案審議の前提(前段階)においては、議案である政策についての十分な知識・情報が求められます。例えば、我がまちや他自治体での運用状況、当該政策の特長、どこに問題があるのかの特定、政策目標、見込まれる必要な政策資源量などを前さばきで概略把握しておかないと、いきなり議案のチェックポイント段階に入っても、そのチェックの効果は定かではないものとなってしまいます。情報があっても、分析に時間がかかることもあります。
 なお、土山希美枝は、政策をめぐる情報を、①争点情報、②基礎情報、③専門情報に分けて整理しています。争点情報とは、例えば新聞で問題として取り上げられるような、課題を明確化する情報です。市民相談は、自治体のナマの争点情報を集めることになります。他の自治体議会の議会だよりに掲載されている政策(条例や事業等)を参考にするといった工夫でも争点情報を集めることができます。基礎情報とは、統計情報に代表される、課題状況を裏付けする情報です。いわば課題を客観的に下支えする重要な情報といえます。専門情報とは、専門家や研究者がその論点をどう論じているか、争点情報や基礎情報をどう解釈、分析しているかという情報です。雑誌記事や論文また文献という形で公表されています(土山 2014:3)。
 これらを議員自ら情報を集めるのもよいし、議会事務局と連携して議会図書室にこれらを配置しておくことも考えられます。議員控室に至る廊下や議員談話室の掲示板に、特に重要と思われる新聞、雑誌、インターネットのお薦め情報(重要な法律の制定改廃・自治体の先進事例(議会、行政)・法令違反ニュース(例えば、倫理条例違反など))を定期的に掲載することもよいでしょう。もちろん、パソコン、タブレット、スマートフォンを活用している議会もあるでしょうが。
 さらに、土山が一般質問についていうように、議員には情報収集能力・争点化能力・説明説得能力が求められます。これらを通して「議案作成力・議案審議力」が伸びることは、議員の議員活動・議会活動にも効果的であり、議会の人的資源開発になっているといえます(土山 2015:2)。
 もちろん、求められる議案作成・議案審議のための議会内同意と多数派工作が可能かを予測することも必要です。

【ポイント6】複数選択肢から、どう議案内容になったのかをまとめる
 議案については、複数の選択肢がある中から、どういう経過を経て議案内容になったのかを説明することが求められます。最終的な選択肢すなわち議案について、納得感を持って共有し合意してもらえるためにも、根拠となる数値や背景を正確に調査・準備し、執行部との事前の調整やプレゼンテーションの方法にも気を配ることが大事です。
 プレゼンテーションについては、理解の共有を図るためにパネルを利用することも一つの方法です。パネルを準備する場合は、図表を用いたり、箇条書きにすることで、より効果が上がります(田中 2015)。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る