地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2024.11.25 政策研究

第56回 組織性(その2):破綻・再生

LINEで送る

「暗黙の政府保証」の二つの型

 「暗黙の政府保証」があれば、債務不履行があり得ないから、債権者・貸し手(主に金融機関)は債権放棄を迫られることはない。したがって、論理的にはいくらでも「追い貸し」が可能であるし、自治体は資金不足になることはない。このようになれば、自治体も貸し手も財政規律が弱まる、というメカニズムがあり得る。それゆえに、破綻の可能性が、財政規律のために必要であるという考えもあろう。
 その考え方とは、以下のようなものである。財政弛緩(しかん)すれば自治体が破綻して、サービス提供が不可能になる危険があるならば、住民は自治体当局の財政運営を監視するだろう。それが「住民責任」である。あるいは、自治体為政者は、そのような住民の目を気にするだろう。それが「行政責任」、「政治責任」である。また、債権回収が不可能になる危険があれば、貸し手も安易には貸せないだろう。貸すには貸すなりの「貸し手責任」が発生する。貸し手が「貸し渋り」をすれば、自治体当局者は借りることを諦めるだろう。あるいは、貸し手は高金利を要求することで、破綻リスクをカバーできる。自治体当局者は、高金利であれば、借りることを抑えようとするだろう。そして、為政者・住民と債権者との双方に、自治体破綻の責任があるならば、双方が応分の負担をすることも、それなりにバランスがとれる。
 しかし「暗黙の政府保証」とは、自治体に無規律の財政運営を黙認・追認するということとは限らない。確かに、論理的には、自治体が借り入れれば借り入れるだけ、政府がATMのように自治体に対して資金供給をするという意味での「暗黙の政府保証」もあり得る。政府が連帯保証を負うような「国負担型暗黙の政府保証」と呼べよう。俗論でイメージされる「暗黙の政府保証」とは、このタイプである。このような「国負担型暗黙の政府保証」では、自治体の財政規律は確保できない。しかし、国又は国民が、放漫運営の自治体の「尻拭い」をするような財政負担を認めることは考えにくいだろう。
 むしろ、政府が自治体に対して強力に介入することによって債務調整を回避する、つまり、貸し手の債権回収だけは保証する「暗黙の政府保証」が自然であろう。「暗黙の政府保証」とは、政府が自治体に介入し、自治体当局者や住民の責任を一方的に追及し、貸し手の責任を全く追及しない、ということでも可能である。「住民負担型暗黙の政府保証」と呼べよう。「暗黙の政府保証」とは、特段の形容詞を付さないならば、基本的には「住民負担型暗黙の政府保証」を意味するのである。
 連邦破産法第9章は、「暗黙の政府保証」をしない。つまり、貸し手の全額債権回収を保証しない。むしろ、債務調整であるから、政府保証をしないのが、破綻法制である。「住民負担型暗黙の政府保証」は、住民に厳しく、貸し手(金融機関など)に甘い。連邦破産法第9章の債務調整が、住民と貸し手の「痛み分け」でバランスをとるのに対して、「暗黙の政府保証」は金融機関など貸し手のみを守る(4)
 もちろん、貸し手とは誰なのかという問題があり、必ずしも金融機関とは限らない。アメリカの場合には、職員年金基金も大きな貸し手(積立不足)であり、また、広く一般人が投資家として地方歳入債を購入して、債権者となることもあり得る。さらに、地方債に金融保証保険がついていれば、元利払いが滞った場合には、投資家(債権者)に対しては保険会社が立て替え、保険会社が債権者となって自治体への債権回収を図ることもある(5)。日本の場合には、自治体職員の年金(共済組合)は、個別自治体別ではないため、職員年金基金が登場することはない。むしろ、政府系金融機関が貸し手になることがあろう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る