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2024.11.25 政策研究

第16回 政策の困難性とそれを超克するもの

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政策の困難性①:政策(信念)を崩す忖度(そんたく)・狭量・空想

 政策には、石橋湛山がいうように「事物を自由に考えること、善い点があればこれを受け容れ採用する寛大な精神をもつこと、総ての問題を現実の生活に即して思考すること」が必要です(保坂 2021:114)。しかし、実際には忖度・狭量・空想が働くことで、自らの政策(信念)を崩すことがあります。そうならないためには、日頃から自らの政策(自らの思想・哲学・覚悟を含む)を明確にしておく言説が重要であり、それに基づいて行動することによって信頼を得ることが求められますが、実際には難しいのです。

政策の困難性②:複合的困難性(社会格差解消の困難性、地方自治実現の困難性、本人・代理人関係の困難性、永続的地球模索の困難性(=地球の限界からの困難性))

 現代においては、社会格差解消の困難性、地方自治実現の困難性、本人・代理人関係の困難性、永続的地球模索の困難性(=地球の限界からの困難性)などから、政策の適正な決定と実施は難しい状況にあります。
 現状において「社会格差」には、人の病気・障がい・出身地域・子育て・教育・勤労・就職などの「属性による格差」と、それらによる「社会の固定化という格差」(=「弱者の連鎖性による社会の格差」)という、「二重の社会格差」があります。「二重の社会格差」は「社会格差解消の困難性」を表しています。「社会格差」をなくすには、構造的に連鎖を止める政策が必要となります。
 「地方自治実現の困難性」とは、自治体は国の行政府(内閣や府省)や裁判所により、制御される可能性があるということです。自治体と国の政策資源の比較では、自治体よりも国の収入が大きく、地方交付税や補助金等の移転財源として自治体へ国が予算を支出する仕組みとなっていることから、特別交付税や補助金等により、自治体を国が制御することもあるでしょう。そのとき、自治体は、財源を得るために国の政策に図らずも「忖度」してしまう可能性があります。このことは、基礎自治体と広域自治体の間でもいえます。
 「本人・代理人関係の困難性」とは、例えば、市民が本人であるときには、市民から信託を受けた政府(議会・首長(行政))は代理人となります。議長や首長が本人であるときには、彼ら(彼女ら)から指揮監督を受ける職員は、彼ら(彼女ら)の代理人となります。職員間では、上司は本人であり、指揮監督を受ける職員は代理人となります。このような「本人・代理人関係」には、「隠された情報(例えば、能力の有無)」と「隠された行動(例えば、怠けること)」があり、円滑な市民・政府(議会・首長(行政))関係や、組織内関係が容易でなくなります。
 「永続的地球模索の困難性(=地球の限界からの困難性)」は、個々の市民にも、団体にも、会社にも、そして自治体、国、国際機構にも関わります。今、地球では、食糧・エネルギーの確保やCO₂の排出抑制等による自然環境などの持続可能性の維持が喫緊の課題となっています。また、国により急激な人口変動問題(国による増加・減少がある)があったり、国によっては衛生政策や地域活性化政策の実施が問題となっています。「永続的地球模索」には、このような困難性があります。

政策の困難性③:「政策の悪構造」と「政策の複雑性」

 公共政策あるいは政府政策に限って見ても、政策の主体や客体は、市⺠、団体、政府(⾃治体、国、国際機構)と多様です(図1参照)。市⺠は個々に考え⽅が異なります。団体の構成員は意⾒が食い違うこともあります。⾃治体では⼆元代表が政策の違いで争うこともあります。国では国益と省益の違いから政策が進まないこともあるでしょう。国際機構では国の利害が対⽴することで世界的な課題への取組みが遅れる事例も⾒受けられます。これらのことは「政策の悪構造」といえます。秋吉貴雄によれば、「政策の悪構造」は意思決定者が多数であるとされ、どのような状態を⽬指すかという⽬標が不明確であり、必ずしも合意がとれているわけではないとされます。そして、代替案の数は、無限定的に多数あるとされます。さらに、代替案がどのような結果をもたらすかということに関しても、景気状況といった問題の環境が将来どのようになるかは不確実であり、予測することが不可能であるといいます(秋吉 2015b:68-­69)。
 また、「政策の複雑性」を構成するものとして秋吉は、①全体性、②相反性、③主観性、④動態性という四つの特性があるとしています。①全体性とは、個別の政策問題は他の政策問題と相互に関連しているため、それらの問題との関連性を踏まえた上で、⼤きな一つのシステムとして検討しなければならないということです。②相反性とは、一つの政策問題の改善が他の問題の悪化につながる可能性が⾼いということです。③主観性とは、問題に関わる個々のアクターのそれぞれにおいて問題と認識されるものが異なるということです。④動態性とは、政策問題は、時間とともにその構造や要因も変化してくるということです(秋吉 2015a:28­-30)。このような「政策の複雑性」という政策の特性があるため、政策は実現し難くなります。
 なお、⾃治体議員・議会には、これら(「政策の悪構造」と「政策の複雑性」)を解決する模索が求められています。
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図1 公共政策と政府政策の関係

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