2024.10.25 政策研究
第15回 選挙制度と議会・議員の評価
選挙が国民主権と民主主義の基盤
岩崎美紀子は、選挙が国民主権と民主主義の基盤であるのは、代表を送るだけではなく、権力の座にある者を辞めさせることができるからだといいます。また、武力を使わず、血を流さず、権力者を入れ替えることができる、選挙権とはこのような投票の機会を有することであるとも述べています(岩崎 2016:ⅴ)。さらに宇野重規は、選挙は、政治を自分たちの手でつくり、そして、政治をちょっとでも良くつくり変えていくためにあるといいます(宇野 2024:12)。
このような、選挙の機能を発揮し、目的を達成するためには、繰り返しになりますが、①市民(一般市民、市民モニターを含む)、②議会、③現職議員(引退する議員を含む)、④首長(引退する首長を含む)、⑤職員(執行部職員、議会事務局職員を含む)、⑥専門家・外部機関等(専門家・外部機関等が受託した場合、専門家・外部機関等が自主的に行う場合の両方を含む、外部機関には他の自治体・国・民間シンクタンク等を含む)、による評価(適性評価や政策評価)が必要です。焦点を自治体議員選挙に絞れば、当事者である議会、そして議員による評価が適正に行われていることが特に重要となります。
結び
本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「選挙制度と議会・議員の評価」と、これらに関する事項について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。
- 既存の選挙制度の固定化(≒自己目的化)を不断に警戒し、制度の働き方を監視し批判し見直すことで、初めて選挙制度や選挙自体が生きたものとなるといえます。
- 自治体政府(議会・行政)が地域経営を適切に行うためには、その政府の機関を構成する最も主要なアクターである議員と首長が、選挙で正しく選ばれていることが必要です。選挙で正しく選ばれているといえるためには、立候補者の政治家としての適性と政策が有権者により評価されていることが前提となります。
- 選挙を通じて議員は生まれるのですが、議員になることで自治体政府に関わる権限と責任を持つことになります。
- 責任を判断するためには、評価が必要です。
- 議会基本条例や、それに基づく議会運営・議会活動についての評価を選挙戦で市民に示すことが不可欠となります。さらに、市民福祉の向上のための活動の基礎になっている総合計画についての評価を選挙戦で公約として示すことが求められます。この二つの評価を候補者が選挙戦で示すことで、市民による判断基準が明確になるだけではなく、議会の連続性が生まれることになります。
- 議会基本条例や総合計画、及びそれらをめぐる議会活動の到達点を候補者が容易に知ることのできる場も必要です。議会・議員評価によって、議会の到達点を市民だけではなく候補者が認識し、それへの「評価」を候補者が表明する(=公約)ことで、新たな議会に従来の議会・議員活動が継続されます。そこに、評価と選挙の相補性があるといえます。
- 議員は、市民の声(信託)に応えるため、「権力の魔力」を超克することが求められます。「権力の魔力」を超克するためには、望ましい選挙制度の下、正しい選挙が行われることが必要です。
- 現状についての認識や将来についての目標に、議員(立候補者を含む)と有権者の間でズレがあるときには、選挙を通じてそのズレが是正されていきます。
- 選挙制度の欠点を絶えず自覚しつつ、少しでもより良いものにしていく努力をするというリアリズム(現実主義)が、選挙制度に関わる者には求められます。
- 選挙が国民主権と民主主義の基盤であるのは、代表を送るだけではなく、権力の座にある者を辞めさせることができるからです。
- 選挙は、政治を自分たちの手でつくり、そして、政治をちょっとでも良くつくり変えていくためにあります。
- 選挙の機能を発揮し、目的を達成するためには、①市民(一般市民、市民モニターを含む)、②議会、③現職議員(引退する議員を含む)、④首長(引退する首長を含む)、⑤職員(執行部職員、議会事務局職員を含む)、⑥専門家・外部機関等(専門家・外部機関等が受託した場合、専門家・外部機関等が自主的に行う場合の両方を含む、外部機関には他の自治体・国・民間シンクタンク等を含む)、による評価(適性評価や政策評価)が必要です。焦点を自治体議員選挙に絞れば、当事者である議会、そして議員による評価が適正に行われていることが特に重要となります。
■参考⽂献
◇岩崎美紀子(2016)『選挙と議会の比較政治学』岩波書店
◇宇野重規(2024)『選挙、誰に入れる? ちょっとでも良い未来を「選ぶ」ために知っておきたいこと 』Gakken
◇江藤俊昭(2016)『議会改革の第2ステージ─信頼される議会づくりへ』ぎょうせい
◇丸山真男(2014)『日本の思想』(改版)岩波書店