地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2024.10.25 政策研究

第15回 選挙制度と議会・議員の評価

LINEで送る

立候補者を「評価すること・評価できること」の効果

 江藤俊昭は、議員(立候補者)の評価と選挙について、次のように述べています。議会運営と市民福祉の向上という領域における議会・議員活動に対する評価を市民だけではなく、立候補者が確認し、それへの態度を選挙戦で明確にすることが大切です。具体的には、議会基本条例や、それに基づく議会運営・議会活動についての評価を選挙戦で市民に示すことが不可欠となります。さらに、市民福祉の向上のための活動の基礎になっている総合計画についての評価を選挙戦で公約として示すことが求められます。立候補する想(おも)いは重要ですが、地域経営の軸についての評価を踏まえたものでなければ、新たな議会の運営が個々バラバラな想いの寄せ集めになるだけで、市民も候補者による市民福祉の向上のための政策の力点が把握し難くなります。少なくともこの二つの評価(「議会基本条例や、それに基づく議会運営・議会活動についての評価」と「総合計画についての評価」)〔( )内は筆者補〕を候補者が選挙戦で示すことで、市民による判断基準が明確になるだけではなく、議会の連続性が生まれることになります(江藤 2016:184-185)。
 また、江藤は次のようにも述べています。立候補者すべてが議会基本条例や総合計画について知ることは容易ではありません。その学習を立候補者個人だけに委ねるわけにはいきません。現職有利な状況を是正して立候補のハードルを低くすることが必要です。さらに、議会基本条例や総合計画、及びそれらをめぐる議会活動の到達点を候補者が容易に知ることのできる場も必要です。選挙管理委員会で行うことも考えられますが、議会自身が候補者を対象とした事前学習会・研修会を開催してもよいのです(江藤 2016:185)。議会・議員評価によって、議会の到達点を市民だけではなく候補者が認識し、それへの「評価」を候補者が表明する(=公約)ことで、新たな議会に従来の議会・議員活動が継続されます。そこには、評価と選挙の相補性があるといえます(江藤 2016:185-186)。
 江藤のいう、以上のような議会・議員(立候補者を含む)の評価と選挙の関係(立候補者の政策づくりやそのための支援制度の制定を含む)は、市民だけではなく議会・議員にとって、深く認識しておくべき大切な事柄です。そのためには、評価を記録しておくことが必要です。その記録方法には、議会白書の作成・公表が考えられます。やがて積み重なった議会白書は、議会そして地域の宝となります。

「権力の魔力」を超克する選挙

 議員は、市民の声(信託)に応えるため、「権力の魔力」を超克することが求められます。ここでいう「権力の魔力」には、保身や出世のために忖度(そんたく)してしまう魔力、鉄の三角関係(例えば、議会・首長・職員)により市民をないがしろにする魔力、議員のためだけのレガシーを追求してしまう魔力、などがあります。

 「権力の魔力」を超克するためには、望ましい選挙制度の下、正しい選挙が行われることが必要です。ここで望ましい選挙制度とは、多様な視点(例えば、権力が分散できるような選挙制度(市町村議会議員選挙、都道府県議会議員選挙、衆議院議員選挙、参議院議員選挙の選挙制度をバラバラにする等))が確保された選挙制度を指します。正しい選挙とは、「普通選挙」「平等選挙」「直接選挙」「秘密選挙」「自由選挙」等の原則を守っているだけの選挙ではなく、選挙運動の過程においてもドン(=ボス・黒幕)が力を発揮できない選挙、パリテ(男女数が同じ)状況が確保されている選挙、一定の世襲制限がある選挙、選挙権・被選挙権の年齢が一定引き下がった選挙、活性化して投票率が高い状態にある選挙を指します。

市民感覚とのズレを解消する選挙、求められる選挙を良くするリアリズム

 現状についての認識や将来についての目標に、議員(立候補者を含む)と有権者の間でズレがあるときには、選挙を通じてそのズレが是正されていきます。しかし、その歩みは必ずしも速いとは限らず、遅いことも少なくなく、ときには是正されずズレが大きくなることもあります。それは、制度改革が実効性を上げるためには時間がかかるといったことだけではなく、選挙制度を良くしたと思っても新たな制度が不十分であったり、逆効果を生んでいることが要因であるかもしれません。
 また、どんな制度(仕組み)にも「完璧な制度」がないように、選挙制度においても「完璧な制度」に至ることはできません。そのようなことから、結局は選挙制度を活かすも殺すも、それを用いる人の力量にかかってきます。選挙制度の欠点を絶えず自覚しつつ、少しでもより良いものにしていく努力をするというリアリズム(現実主義)が、選挙制度に関わる者には求められます。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る