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2024.10.25 政策研究

第15回 選挙制度と議会・議員の評価

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

 本稿では、「選挙制度と議会・議員の評価」と、これらに関する事項について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。

求められる選挙制度の不断の監視・見直し

 丸山真男は、『日本の思想』の中に、「『である』ことと『する』こと」という論考を載せています。その中で丸山は、「自由を“祝福”することはやさしい。それに比べて自由を“擁護”することは困難である。しかし自由を擁護することに比べて、自由を市民が日々“行使”することはさらに困難である」というアメリカのある社会学者の言を紹介した後、「私たちの社会が自由だ自由だといって、自由であることを祝福している間に、いつの間にかその自由の実質はカラッポになっていないとも限らない」(丸山 2014:171-172)、と社会に警鐘を鳴らしています。そして、「自由は置物のようにそこに“ある”のではなく、現実の行使によってだけ守られる、いいかえれば日々自由になろうと“する”ことによって、はじめて自由“であり”うるということなのです」「自分は自由で“ある”と信じている人間はかえって、不断に自分の思考や行動を点検したり吟味したりすることを怠りがちになるために、実は自分自身“のなかに”巣食う偏見からもっとも自由でないことがまれではないのです」(丸山 2014:172)と述べています。
 このような、丸山の自由についての考え方は、選挙制度にも当てはまるのではないでしょうか。既存の選挙制度の固定化(≒自己目的化)を不断に警戒し、制度の働き方を監視し批判し見直すことで、初めて選挙制度や選挙自体が生きたものとなるといえます。

議員(立候補者を含む)には評価が必要

 そして、自治体政府(議会・行政)が地域経営を適切に行うためには、その政府の機関を構成する最も主要なアクターである議員と首長が、選挙で正しく選ばれていることが必要です。選挙で正しく選ばれているといえるためには、立候補者の政治家としての適性と政策が有権者により正しく評価されていることが前提となります(表1、表2参照)。そのため、有権者には選挙の前後において、立候補者(引退する政治家を含む)の評価を行うことが必要であり、政治家にはそのことを可能にする仕組みを講じることが求められます。これらのことが実現することで、初めて選挙制度や選挙自体が生きたものとなります。そして、議会・議員に的を絞るならば、こうした段取りを踏まえて自治体議会・自治体議員も自らを評価することが可能となります。
 また、選挙を通じて議員は生まれるのですが、議員になることで自治体政府に関わる権限と責任を持つことになります。権限と責任は対で存在しています。権限のあるところには責任が生じ、責任があるところには権限が必要です。そして、責任を判断するためには、評価が必要です。
 なお、このような適性評価や政策評価の評価者には、①市民(一般市民、市民モニターを含む)、②議会、③現職議員(引退する議員を含む)、④首長(引退する首長を含む)、⑤職員(執行部職員、議会事務局職員を含む)、⑥専門家・外部機関等(専門家・外部機関等が受託した場合、専門家・外部機関等が自主的に行う場合の両方を含む、外部機関には他の自治体・国・民間シンクタンク等を含む)、が考えられます。
1

出典:筆者作成
表1 政治家が選挙で正しく選ばれるための評価の内容(種類)

2

出典:筆者作成
表2 「立候補に必要なもの(条例・計画・財政等の内容と活動事態と評価)」とそれをそろえる者(主体)

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