2024.09.25 議会運営
第94回 調停に係る議会の取扱い
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
調停に係る議会の取扱い
地方公共団体と法人との間で駅前再開発に係る契約が締結され、それに伴い法人に対し地方公共団体が補助金を支出することとなった。しかし、契約を締結した長が選挙によって失職したことにより、新たな長は締結された契約に基づく補助金の支出の凍結を表明した。そのため、法人と地方公共団体の間で話し合いがなされたが、妥協点が見つからず民事調停の申入れが法人よりなされた。その後、法人と地方公共団体の長との間で調停を締結したが、その締結に当たり調停における協議経過や詳細については公表しないとする取決めがなされる中、議会はどのように当該調停案に対し審議を行うべきか。
普通地方公共団体が民事上又は行政上の争訟及びこれに準ずべきものの当事者となる場合には、地方自治法96条1項12号により議会の議決が必要とされている。
【地方自治法96条】
① 普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
12 普通地方公共団体がその当事者である審査請求その他の不服申立て、訴えの提起(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決(行政事件訴訟法第3条第2項に規定する処分又は同条第3項に規定する裁決をいう。以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において同じ。)に係る同法第11条第1項(同法第38条第1項(同法第43条第2項において準用する場合を含む。)又は同法第43条第1項において準用する場合を含む。)の規定による普通地方公共団体を被告とする訴訟(以下この号、第105条の2、第192条及び第199条の3第3項において「普通地方公共団体を被告とする訴訟」という。)に係るものを除く。)、和解(普通地方公共団体の行政庁の処分又は裁決に係る普通地方公共団体を被告とする訴訟に係るものを除く。)、あつせん、調停及び仲裁に関すること。
当該規定が設けられている趣旨は、地方公共団体が民事上又は行政上の紛争の解決に当たって、争訟及びこれに準ずるものの当事者となるようなときは、場合によって、当事者である当該地方公共団体の財政等に重要な影響を及ぼすおそれがあることから、調停に係る地方公共団体の意思決定を地方公共団体の長にのみ委ねることなく議会の議決によることとしているからであると考えられる。