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2024.09.25 政策研究

第14回 選挙と議会・議員

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「選挙と議会・議員」と、これらに関する事項について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 選挙制度が永遠に不完全(未完)であることから、選挙以外にも様々な政治の回路が必要となります。しかし、選挙は有意義です。
  2. 私たち市民や政治家(議員・首長)には、血を流さずにすむよう、選挙を適正に機能させることが求められています。そのためには、人として成熟と洗練を目指すことが必要となります。
  3. 選挙人(≒市民)には、政治家に対する「依存力(=人の力を借りる力)」が求められます。
  4. 政治家は、「政治家の使われ上手」といわれるように、市民に上手に使われることが大切です。自治体議会・議員には、どうすれば「使われ上手」になれるかが課題となります。
  5. 選挙人や政治家の意識/心構えが、人としての成熟と洗練につながります。
  6. 市民が求める安定を確保するために、納得していない市民を大切にすることが、自治体議会・議員の課題となります。
  7. 政治家には、想像力による“やさしさ”と、本質を見抜く“かしこさ”と、組織力を活かす“強さ”が求められます。
  8. 選挙で連携・協力するには、ビジョンをお互いに知っていることが前提条件となります。
  9. 中身のないイメージ選挙(情報の非対称性がある選挙)となっては、市民にとって困りものです。
  10. ジェンダー平等で多様性のある政治の実現に向けて、男性政治を壊す女性議員が増えていけば、女性も、男性も、マイノリティも、あらゆる人が自由で生きやすい社会になります。ジェンダー平等は、自治体議会・議員の政策課題です。
  11. パリテ(男女数を同じにすること)が効果的に機能を発揮するための社会改革は、広く社会でのジェンダーギャップを解消することです。
  12. 選挙に限界があっても、政治家は政策を決定しなければなりません。そして、決定に当たっては、社会の分断を引き起こすことのないようにすることが求められます。
  13. 当選者だからといって、市民にとっていい政治家とは限りません。
  14. 多数決で決定した政策だからといって正しいとは限りません。
  15. 自分が自治体議員であることを掘り崩すようなルール変更(例えば、議員定数の増減・議員報酬の増減・パリテの実施)は、当選を選好の第一とする多くの議員にとっては難しいはずです。
  16. 投票率低下の理由には、①議会に関心がない、②議会に期待できない、③自分の1票がどう影響するのか分からない(有効性感覚不足)、④情報不足で誰に投票していいか分からない、⑤メディアで不祥事ばかり取り上げられている、などを挙げることができます。
  17. 投票率の向上策としては、①市民の声を政策・予算につなげる、②市民への活動報告を行う、③行政の監視を行う、④議会審議を充実させる、⑤決定した理由を説明する、⑥市民の選挙に対する有効性感覚を高める、などが挙げられます。
  18. 違った方向の意見を出すことは簡単ではありませんが、このようなことができる人がいて、社会にイノベーション(革新)が起きます。
  19. (政治)勢力が相互に競争して、勝ったり負けたりを繰り返していくと、その過程を通じてバランスのとれた選択がなされます。
  20. 政党は一つであるよりも複数である方が望ましく、かつ特定の勢力が政治権力を独占しない方が望ましいものです。選挙でも、そのようなことが起きる制度を模索することが求められます。これは、議会・議員の政策課題です。
  21. 選挙制度改革には、豊かな話し合い(議論)が求められます。
  22. 立候補者も政治家も市民とともに、望ましい選挙制度改革を模索することが必要です。他方、制度は人の心を変えていきます。人の心が投票率の向上に向かうような選挙制度改革が期待されます。
  23. 偶然の積み重ねであると分かっていても、努力の結果の必然であると思い込めるような、より公平で効果的な選挙制度を、市民と立候補者ないし政治家でつくり上げることが大切です。
  24. 「李下に冠を正さず」という言葉があります。政治家が、不正を行っていなくとも、疑いをかけられていれば、自治体政府(議会・行政)の効率は下がります。政治家には、選挙前・選挙中・当選後においても、人から疑いをかけられるような行動を避けることが期待されています。


■参考⽂献
◇泉房穂(2023)『社会の変え方』ライツ社
◇宇野重規=若林恵(聞き手)(2023)『実験の民主主義─トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ』中央公論新社
◇大森彌=大杉覚(2021)『これからの地方自治の教科書〈改訂版〉』第一法規
◇樋口恵子=和田秀樹(2024)『うまく老いる 楽しげに90歳の壁を乗り越えるコツ』講談社
◇待鳥聡史(2018)『民主主義にとって政党とは何か─対立軸なき時代を考える』ミネルヴァ書房
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会
◇三浦まり(2023)『さらば、男性政治』岩波書店

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編集 者

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