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2024.09.25 政策研究

第14回 選挙と議会・議員

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「社会にイノベーション(革新)をもたらす異なる意見」「多数派の専制を防ぐ複数党派制」

 待鳥聡史がいうように、みんなが一つの方向で似た見解を繰り返しているときに、違った方向の意見を出すことは簡単ではありませんが、このようなことができる人がいて、社会にイノベーション(革新)が起きるわけです。政党をめぐる議論の展開は、異なる考え方の存在を許容するという意味での社会の多元性が持つ意味を、鮮やかに示すものだといえるかもしれません(待鳥 2018:18)。
 また、待鳥はジェームズ・マディソン・ジュニア(アメリカ合衆国第4代大統領)の議論を紹介しています。マディソンの議論は、国王に権力が集中しているのと同じぐらい、一般の人々や彼らを代表する議会に権力が集中することは危険なのだ、というものでした。それは「多数派の専制」といわれるものです。政治権力を担ってそれを私物化しようとすることを、マディソンは「党派的野心」と呼んでいますが、彼によれば、ある党派的野心を抑えるための最善の方法は、別の党派的野心によって制することなのです(待鳥 2018:26)。
 (政治)勢力が相互に競争して、勝ったり負けたりを繰り返していくと、その過程を通じてバランスのとれた選択がなされます。だとすれば、過程全体を担おうとする勢力、すなわち政党は一つであるよりも複数である方が望ましく、かつ特定の勢力が政治権力を独占しない方が望ましい、ということになります(待鳥 2018:27)。選挙でも、そのようなことが起きる制度を模索することが求められます

求められる選挙制度改革の豊かな議論

 選挙制度改革といっても、例えば、選挙区をどのように割り振るのか、大選挙区制・中選挙区制・小選挙区制のどれにするのか、定数は増やすのか減らすのか、リモート選挙を可能にするのか、選挙人や被選挙人の年齢を変更するか、など様々な方策が考えられます。複数の方法を組み合わせて行う場合もありえます。
 宇野は投票法について、次のように述べています。「個人=インディビデュアルの言葉通り、1人の人間は分割不可能なものだと考えられてきましたが、むしろ人間はディビデュアル=分割できると考えるわけです。経済、社会保障、外交、安全保障、教育などそれぞれのイシューによって、支持する政党が異なることもあります。であれば、自分の1票を分けて、6分の1票はここ、3分の1票はここと、違う政党や人に入れるという発想が、分人民主主義の議論ですね。これまで、こうしたアイデアは技術的に実装が難しいとされてきましたが、いまは十分に可能でしょう」。「いい人を1人選ぶのは難しいけれど、この人だけは絶対ダメという人をあらかじめ除外するとか、いいと思う人には何票でも投じられるといった選挙制度もよく主張される」。そして、メカニズムデザイン/マーケットデザインを研究している経済学者の坂井豊貴氏の『多数決を疑う』(岩波書店、2015年)という本を紹介しています(宇野=若林 2023:234-235)。
 立候補者も政治家も市民とともに、望ましい選挙制度改革を模索することが必要です。他方、制度は人の心を変えていきます。人の心が投票率の向上に向かうような選挙制度改革が期待されます。もちろん、自治体の政治家・職員や国の関係者等が、市民の都合を顧みず自らの都合だけがよくなるように制度を変更・解除することは、あってはなりません。選挙ないし選挙制度づくりにおいて政治家に求められるのは、先述した、想像力による“やさしさ”と、本質を見抜く“かしこさ”と、組織力を活かす“強さ”です。

偶然か必然か──「立候補者と支持者の出会い」「李下(りか)に冠を正さず」

 人生を振り返ったときに、ある人との出会いが偶然の積み重ねであったとしても、ときに必然と思ってしまうようなケースがあります。選挙における立候補者ないし政治家と支持者の出会いは、このようなケースが少なくないのではないでしょうか。偶然の積み重ねであると分かっていても、努力の結果の必然であると思い込めるような、より公平で効果的な選挙制度を、市民と立候補者ないし政治家でつくり上げることが大切です
 なお、政治家には、「李下に冠を正さず」という言葉があります。政治家が、不正を行っていなくとも、疑いをかけられていれば、自治体政府(議会・行政)の効率は下がります。政治家には、選挙前・選挙中・当選後においても、人から疑いをかけられるような行動を避けることが期待されています

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