2024.09.25 政策研究
第14回 選挙と議会・議員
政治家の特性と選挙
選挙の分断性を超克し、選挙の民主性を確保するため、ここでは政治家の特性と選挙について考えてみましょう。
大森彌・大杉覚は、政治家について次のように述べています。「権力の座を求めて、地方の一地域といえども政治の世界に乗り出していく人物は大抵“五欲旺盛”“気力充実”で、並の人間ではないといってもよいでしょう。どちらかといえば、細心であっても自己反省の能力に乏しく、厚顔無恥といえるほどに自己顕示欲が強い人が多いようです。(中略)住民にしてみれば、どんな災難をこうむるかわからないという心配が出てくるのです。それゆえ現行の制度では、この心配を取り除くため、政治のプロの地位を政治のアマチュアである一般有権者が許可する工夫(選挙やリコール)が講じられているのです。(中略)逆に、政治のプロとしては、当選ないし再選をめざして集票活動に熱を入れることにもなるのです」(大森=大杉 2021:72-73)と。
これは、「当選者だからといって、市民にとっていい政治家とは限らない」ということです。多数決で決定した政策だからといって正しいとは限らないのと同じです。
また、現行制度のもとで選ばれた議員は、その制度を変えるインセンティブを持ちづらいという問題もあります。宇野重規は、その理由を自分が国会議員であることの根拠を掘り崩すようなルール変更は、誰もやりたくないからです(宇野=若林 2023:236)、と述べています。自治体議員の場合も、自分が自治体議員であることを掘り崩すようなルール変更(例えば、議員定数の増減・議員報酬の増減・パリテ(男女数を同じにすること)の実施)は、当選を選好の第一とする多くの議員にとっては難しいはずです。
投票率低下の理由と議会の対応策
自治体議会の議員選挙における投票率低下の理由には、①議会に関心がない、②議会に期待できない、③自分の1票がどう影響するのか分からない(有効性感覚不足)、④情報不足で誰に投票していいか分からない、⑤メディアで不祥事ばかり取り上げられている、などを挙げることができます。
他方、投票率の向上策としては、①市民の声を政策・予算につなげる、②市民への活動報告を行う、③行政の監視を行う、④議会審議を充実させる、⑤決定した理由を説明する、⑥市民の選挙に対する有効性感覚を高める、などが挙げられます。
なお、期間別に見た投票率向上の手段と具体的内容は、表3のようにも整理できます。
出典:筆者作成
表3 期間別に見た投票率向上の手段と具体的内容