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2024.08.26 政策研究

第13回 間接民主制としての自治体議会

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議会は市民のために存在する

 議会には、議会は市民のために存在するということを前提として活動することが求められています。そのため、議会は市民とのコミュニケーションをとることが大切であり、コミュニケーションをとるために「議会だより」が必要であることを忘れてはなりません。議会は市民のために存在するという前提を逆転しないよう留意することが大切です。
 また、議会がその存在目的を達成するには、「議会だより」についても市民の信頼が求められます。ところが、いつの間にか「議会だより」における市民と議会との位置が逆転し、「“議会に都合のよい”議会だより」(=“議会・議員のための”議会だより)に入れ替わってしまうおそれがあります。それでは、「議会だより」についての市民の信頼は得られません。良いことだけを載せ、悪いことを載せない「議会だより」では、市民の不信につながります。
 市民の不信ということでは、「議会だより」で必要以上に「議会用語」「行政用語」等の専門用語や外国語を用いることも不信につながります。これは、議会において自己反省ができなくなっていることから生じる事象でもあります。どのような文書でも当てはまることですが、専門用語や外国語を多用している文書には注意が必要です。

「議会だより」は市民の心を踏まえて

 後藤田正晴は、『政と官』の中で、自分の人生を振り返り、表4のように述べています。ここには、議員の「市民の心のつかみ方、市民の理解の仕方・必要性、市民から信頼されるタイミング」が示されています。「議会だより」の作成に当たっても、これらのことを踏まえることが求められるのではないでしょうか。
4

出典:後藤田(1994)から筆者抜粋
表4 自分(後藤田正晴)の人生を振り返って

 なお、後藤田は、政治の本質は調整であるといっています(後藤田 1994:105)。ときに調整には、マジョリティ(多数派)志向ではなく、マイノリティ(少数派)志向をとることが必要となります。難病に係る医療費の助成や、生活保護の仕組みも、マイノリティ(少数派)志向をとるからこそできた制度といえるでしょう。あなたの議会では、マイノリティ志向で、議会運営や政策形成がなされているでしょうか。もう一度確認することが大切です。

「議会だより」にも求められる「話し合い」「組織力」「人脈」「キャリアパス」

 マイノリティ志向では、「話し合い」が必要になります。また、議会が人の集まりである以上、「組織力」が必要になります。「話し合い」と「組織力」のない政治・行政はすべてが劣化の一途をたどります。同じことは、「議会だより」にも当てはまります。すなわち、「話し合い」と「組織力」の欠けた「議会だより」の政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)は劣化の一途をたどります。
 「組織力」を向上させるため、御厨貴は自分の得意分野のほかに、人事のポストを経験し、総務(文書・法務)〔( )内は筆者補〕そして経理(財務会計・予算)〔( )内は筆者補〕のポストを歴任している人材が必要であるといいます。また、自分のいる組織から外の組織に出向して様々な経験をし、他の組織・機関と合従連衡を試みている人材が求められるといいます(御厨 2010:17)。
 議員にしても議会(事務)局職員にしても、そういう経験(議員の場合であれば、いくつかの委員長ポスト・一部事務組合の議員・政党の役員等の経験)をしながら、独自のコミュニケーション・ネットワーク(人脈)を形づくり、それを広げていける人材の有無が、議会にとって重要です。そのことが、「組織力」につながります。なお、独自のコミュニケーション・ネットワークには、組織内の人脈と組織外の人脈があります。
 もちろん、議会ごとに議長や議会(事務)局長のキャリアパス(階段の典型的な上り方)を考えることが大切です。首長主導の議会(事務)局長人事であってはなりません。

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