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2024.07.25 政策研究

第12回 直接民主制と間接民主制

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憲法と「間接民主制により守るべきもの」

 最後に、日本国憲法において「間接民主制により守るべきもの」について考えましょう。間接民主制には、代表者と被代表者の関係性があります。代表者と被代表者の関係性から生ずる、代表者にも被代表者にも守るべき規範があります。その守るべき規範の基本は、日本国憲法の前文と各条文に規定されています。二元代表制による地方自治については、日本国憲法の8章地方自治の規定がありますが、議会も首長も日本国憲法の前文と各条文を前提とした規範の範囲に、行いうる営為は限られます。また、地方自治法等の関連する法律や自治体ごとの条例がありますが、これらの規定も、日本国憲法の規範に沿ったものであることが求められるといえます。日本国憲法を読み直し活用することが重要です。

結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「直接民主制と間接民主制」と、これらに関する事項について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 直接民主制も間接民主制も、その一方だけでは不十分といえます。それは、直接民主制も間接民主制もそれぞれは理念型にすぎないといえるからです。現実には、両者の仕組みが互いに絡み合う(混在する)ことで、その機能を発揮できます。
  2. 日本の自治体の政治体制においては、一部直接民主制を取り入れた間接民主制がとられています。自治体議会においても取り入れられています。
  3. 間接民主制に一部直接民主制を取り入れることにより、市民は選挙と選挙の間においても直接民主制がない場合と比べて、より多くの権限を保留できます。
  4. 市民発案・解職請求・市民投票という直接民主制には、市民の政治に対する有効性感覚を高める可能性があります。
  5. 自治体は、政治家に「知識レベルの能力」があっても「規範レベルの能力」がないと、〈危険な状態〉に陥る可能性があります。政治家には、「知識レベルの能力」と「規範レベルの能力」という二つの能力が求められます。
  6. 自治体職員には、ファシリテーションをする中で、参加者の意思・意向を踏まえ職員自身が成長し、より望ましいファシリテーションができる庭師のようになることが求められます。庭師のように成長することが、政治家(議員・首長)にも求められています。
  7. 自然的偶然性は生まれながらの才能がどのようなものか、社会的偶然性はどのような家庭や社会層において育ったのか、そして予見不可能な偶然性は病気や事故・不況や失業・災害などに見舞われることがなかったのかに、それぞれ対応します。これらの偶然性は、人々が自分ではコントロールできないものであり、したがってその責任が問われるべきではない事柄です。そうした偶然性によって左右され、人生の展望に明らかな有利・不利が導かれるとすれば、その帰結は正当とはいえません。
  8. 自治体議員には、自然的偶然性、社会的偶然性、予見不可能な偶然性を超えた、市民の豊かな生活を実現する政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)をつくることが、政策課題となります。
  9. 間接民主制を担う議員には、様々な自己啓発や様々な機会を経験することで、有権者をはじめとして市民の気持ちを把握し学び、「他者の発見」と「自分の変容」することが求められます。その上で、当該自治体政府(議会・行政)には、家庭・近隣社会・学校・勤務先・他の自治体政府・国・国際機構などの他者と連携・協力・制御し合いながら、当事者を含めた市民との関係を築くことが政策課題となります。
  10. 議会基本条例・自治基本条例には、行政統制だけでなく行政活用・議会統制・議会活用に関わる規定も少なくありません。特に、条例制定後時間がたっていたり、それほど時間がたっていなくとも改選で議員が入れ替わっている場合には参考になるはずです。もう一度、議会基本条例・自治基本条例を、みんなで読み直して活用しましょう。
  11. 議会も首長も日本国憲法の前文と各条文を前提とした規範の範囲に、行いうる営為は限られます。また、地方自治法等の関連する法律や自治体ごとの条例がありますが、これらの規定も、日本国憲法の規範に沿ったものであることが求められます。日本国憲法を読み直し活用することが重要です。


■参考⽂献
◇宇野重規=若林恵(聞き手)(2023)『実験の民主主義』中央公論新社
◇加藤秀治郎(2019)「政治学の新動向」堀江湛=加藤秀治郎編『政治学小辞典』一藝社、199~202頁
◇桑原英明(2019)「行政統制」堀江湛=加藤秀治郎編『政治学小辞典』一藝社、245~247頁
◇公共政策研究所(2024)「全国自治基本条例・議会基本条例の施行状況(2023.10.1現在)《修正版》」(2024年3月29日付け、https://koukyou-seisaku.com/image/2023.10.1jitigikaisekoujyukyou2.pdf〔2024年7月12日確認〕)
◇齋藤純一=田中将人(2021)『ジョン・ロールズ─社会正義の探究者』中央公論新社
◇待鳥聡史(2015)『代議制民主主義─「民意」と「政治家」を問い直す』中央公論新社

 

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