一般質問は政策提案の手段たり得るか
一方、一般質問を政策立案機能発揮の手法として捉える向きもあるが、片山善博氏も「『質問を通じて政策を実現させる』という手法にも難点が多い」と指摘する(3)とおり、筆者も困難だと考えている。もちろん、執行部と水面下で調整してきた政策を、最終的にオーソライズするための手段としてはあり得るだろう。だが、政策提案には機関としての合意形成が必要となるため、一般質問が議員個人の意思表明の場でしかないことに鑑みると、制度設計上、目的の一つに位置付けることは難しいのではないだろうか。
具体的には、突然、新たな政策を一般質問で提案してみても、質問議員は議事機関としての意思を代表する立場にはない。他の議員は全て反対かもしれない一議員からの個人的提案に、答弁者は執行機関の意思として発言することになるため、その場で議員の提案に前向きな答弁をすることは現実的ではない。ほとんどの場合、政策には予算やマンパワーの確保が必須となることからも、質問通告から答弁までの時間でそれらを検討、調整することは一般的に困難だからである。
議会の政策提案手段としては、別のスキームを構築した方がよいと考えるゆえんである。
一般質問を活かすためには
したがって、一般質問を議会として活かすには、行政監視機能の発揮に資する方向性で考える方が現実的だろう。その上で、法定制度などもとよりないのであるから、それぞれの議会で独自に制度設計することが求められる。
具体例としては、北海道別海町議会のように、通告前に議会として一般質問項目を集約して全体で議論する「一般質問検討会議」を設けるもの、北海道鷹栖町議会のように、住民にあらかじめ質問内容を広報するとともに、本会議当日には傍聴者に一般質問の質疑応答内容に「通信簿」をつけてもらう試みなど、多様な事例がある。
手法は様々でも共通するのは、議員の個人プレーではなく「チーム議会」として、一般質問を活用しようとしていることである。一般質問を自治体議会に有用なものとするためには、議員個人のパフォーマンスの場ではなく、住民に論点を分かりやすく伝える議会の機関としての活動にいかに昇華させるかがポイントではないだろうか。
(1) 片山善博『片山善博の自治体自立塾』(日本経済新聞出版社、2015年)99頁「19 地方議会への違和感 質問中心の議会運営を見直せ」。
(2) 片山・前掲注(1)117頁「22 地方議会への違和感 コネと学芸会風を排す」。
(3) 片山・前掲注(1)122頁。