地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

特集 一般質問 再考と深化

2024.07.10 一般質問

議会(事務)局から見た一般質問

LINEで送る

誰のための一般質問なのか

 一般質問というと議員が執行機関に対して行う質疑応答の制度であることから、執行部から満足のいく答弁を引き出すためのテクニックに興味が集まりがちである。それも否定されるものではないが、主に質問者の満足感を高めようとするものであり、住民自治の主役である一般市民の傍聴時の満足感を高めようとする観点からの議論はほとんどない。つまり、現在の多くの自治体議会において一般質問で最も欠けているものは、市民に聴いてもらおうとする意識ではないだろうか。議会は原則公開の場で、市民に議論を聴いてもらうことを前提とした場である。もちろん、登壇予定日時に自分の支援者を傍聴席に集める光景は日常的であるが、いつでも傍聴する一般市民を意識したものであるべきであろう。
そして、外部の議員研修会でも議員自身が指摘していた一般質問の課題としては、「持論を展開するばかりで質問になっていない」、「数字を聞いているだけの質問」、「いつも地域要望に終始している」などがあった。これは、決して特定の議会での話ではなく、むしろどの議会でも散見されることであろう。
 確かに、演説のような主張を会議録に残すことだけを目的としているかのような質問や、事務的な回答を求めるにすぎないものは、どこの議会でも散見されるからといって正当化されるものではなく、一般質問の場で行うにふさわしいものではないだろう。反面、執行部職員にとってみれば、質問時間の制限がある中では答弁書作成の絶対量が減り、答弁の難易度も下がる楽な質問といえる。そのため、議員と執行部職員だけで答弁調整がされるプロセスからは、そのような質問をなくそうとする機運は生まれにくいのも事実である。
 だが、それは一般質問を議員と行政の関係性でしか捉えていないからであり、用意された原稿を朗読し合うだけの「学芸会」(2)などと揶揄(やゆ)されるもので関係者が満足している限り、議会を傍聴してみようという一般市民の動機を失わせるものでしかない。誰のための一般質問かという命題から考えれば、議員と執行部のためではなく、市民のためのものであるはずであり、そこに根本的な意識のズレがあるのではないか。
行政の専門家ではない多くの市民に一般質問を聴いてもらうためには、難しいテクニック論のもっと手前に大事なポイントがあるように思える。もちろん根本的には答弁者に「反論権」を認めて、実質的な議論の場を実現することが最重要ポイントである。原稿を交互に読み合うだけの場を傍聴したいとは誰も思わないだろうが、一方的な質問の場ではなく相互に主張をぶつける議論の場であれば、傍聴を希望する一般市民は自然と増えると思うからだ。
 だが、残念ながら本会議を議論の場とするには自治体議会内部のハードルが高いため、まずは、質問する行政課題を端的に指摘し、疑問点をコンパクトに質(ただ)すことから始めてはどうだろうか。人間の集中力には限界があり、質問の前段で長時間にわたって持論を展開されると、質問事項に差しかかるときにはすっかり集中力が途切れ、肝心なところを聞き逃すということになる。持ち時間を使い切ることだけを目的にしているのではないか思わせる冗長な質問は、話す側の満足感は高いのだろうが、聴く人への配慮に欠けている。一般社会でも長い話は嫌われると多くの人は知っているのに、一般質問の場では制限時間いっぱいまで話すことに意義があるような価値観にとらわれてしまう。本来、発言時間の長さではなく、何を質しているかが重要なはずである。
 次に、まるで権威付けのためにやっているかのような、簡単なことをあえて難しく表現するようなことはせずに、むしろ難しいことを簡明に話すよう心がけることが必要である。特に行政関係者にしか認識されていない常識や業界用語などを多用されても、一般市民には意味不明であろう。
 最後に、ゆっくりと話すことである。与えられた発言時間内に少しでも多くの質問項目を詰め込むことがよいと思い、まくし立てるかのような早口での質問も散見されるが、傍聴者は質問原稿を見ながら聴いているわけではないのだから、質問主旨を正確に把握することすら難しくなる。抑揚のないマシンガントークは発言者の自己満足でしかなく、文脈上、重要なところではあえて間をとって強調するなど、傍聴者ファーストの精神が求められる。
 どれも改革案としては、何の変哲もないことであるが、やってみると全てが発言者の欲求とは正反対となるので意外に難しいと思う。しかし、実現したときの市民からの印象も大きく変わるはずである。いずれにしても、まずは一般質問の当事者である議員や行政関係者の視点ではなく、議論を聴く市民の視点でニーズを想定し、行動することが必要だろう。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る