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2024.06.25 政策研究

第11回 民主主義と議会⑥─「利他」「自他」

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多様な人々と経験(経験主義)と限界、「利他」「自他」の考えに役立つ「ジョハリの窓」

 人は多様です。年齢・性別・出自・学歴・職歴・得意能力等で異なるし、知識・知恵・思考により考え方も様々です。中には、物事に無関心な人・無意識な人もいます。そのため、一つの経験/体験が人に影響を及ぼす範囲や深さには、違いが生じます。このことから、経験は万能ではないということになります。また、全てを経験するということは、経験しないという経験を経験できない、というジレンマが生じます。
 このような問題を超克するため、人や組織や社会は「利他」「自他」の考えにより成り立っているため、その前提である自己及び他者の状況を知ることが求められます。その際には、「ジョハリの窓」を用いて考えることが役立ちます。自治体議会にとっては、自己を議会に置き換えて他者の状況を知ることが重要です(図2参照)。「開放の窓」が広がるほど「利他」「自他」の考えが円滑に進むことになります。
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出典:筆者作成
図2 議会における「ジョハリの窓」

「利他」「自他」の考えと神野直彦『経済学は悲しみを分かち合うために―私の原点』

 ここでは、神野直彦の『経済学は悲しみを分かち合うために─私の原点』から、「利他」「自他」を考えてみましょう。この本の帯には「人間を幸福にする経済をめざした財政学の第一人者が自らの『生』と『思想』を振り返り、経済学の使命を根源から問う」とあります。この著書は、神野が生まれたときから今日に至るまでの、氏を取り巻く環境や氏自身の子どもの頃からの思考形成過程が、氏の成長と出来事に沿って著されています。
 その中には、「財政社会学という方法論に依拠して、国家、市場、共同体を和解させながら、より人間的な未来を構想しようと意図してきたのである」(神野 2018:224)という記述があります。この考え方は、自治体政府の関係者(市民・議員・首長・職員等)にとっては、「政府(自治体政府・国・国際機構)、市場、コミュニティを和解させながら、より人間的な地域の未来を構想する」と換言することができるかもしれません。
 なお、終章「悲しみを分かち合うために」には、「悲しみが吹き消していく心の中の炎の数よりも、愛が灯していく心の中の炎の数のほうが圧倒的に多い」(神野 2018:236)とあり、「あとがき」には、「『悲しみ』を『幸せ』に変えるためには、『悲しみ』を『分かち合う』ことが求められる」(神野 2018:248)とあります。これらの言葉は、私たちに希望をもたらすとともに、自らの責任と役割を改めて認識させることになります。そこには、「利他」「自他」の考えが見て取れます。

「利他」「自他」の考えと試行錯誤、「利他」「自他」の考えと人の脆弱(ぜいじゃく)性

 人は、試行錯誤を重ねていく中で、すなわち、何かに衝突し、迷い、挑戦し、失敗し、ということを繰り返すことで自己を知ることができます。そして、自己を知ることは自信になり、逆にそれらのことが「利他」「自他」の考え、「利他」「自他」の実現につながります(図3参照)。
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出典:筆者作成
図3 「自己を知る」過程から「利他の考え・実現に到達する」プロセス

 けれども社会には、「改革は己の負担が少ない範囲で行われる」「改革は抵抗の少ない経路を通って起きる」という問題もあります。また、「往々にして自らに都合の良い面を強調し、悪い面を隠蔽する」という問題もあります。そのため、このような人の持つ脆弱性を超克することが求められ、そこには「利他」「自他」の考えが思想基盤として必要です。

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