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2024.06.25 政策研究

第11回 民主主義と議会⑥─「利他」「自他」

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元・大和大学政治経済学部教授 田中富雄

  本稿では、「利他」「自他」と、これらに関する事項について再考します。そして、その上で政策過程において、これらの言葉を発するときの「自治体議員の発言に期待される含意と政策」について考えたいと思います。

これまで議論され、今も議論されている「利他」「自他」の考え

 「利他」「自他(自利利他)」という言葉があります。「利他」とは、他人の利益を追求することを指します。「自他」とは、自分自身と他人の利益を同時に追求することを指します。ちなみに、自分自身の利益を追求する「自利」という言葉もあります。
 これらの言葉(考え方)については、古今東西で関心を持ち続けられてきました。例えば、アリストテレス、ブッタ、キリスト、ムハンマドといった哲学者・宗教者や彼らからつながる者もそうでした。近年では、「利他」「自他(自利利他)」が、政治・経済・社会においても多く取り上げられ議論されています。

「利他」の考えと「アメとムチ」

 「利他」の考えがあれば、敵と味方を分けるような思考に陥らないといえるでしょうか。通常、組織や社会においては、褒賞と刑罰という「アメとムチ」が手段として使われます。褒賞は組織や社会のポジティブな面を促進し、刑罰は組織や社会のネガティブな面を抑制します。「アメとムチ」は必要なものです。しかし、「アメとムチ」だけでは、組織や社会は良くなるとは限りません。「アメとムチ」は必ずしも平等・公平をもたらしません。「アメとムチ」は、ときに人や組織や社会に必要以上の褒賞や刑罰(例えば死刑)を生じさせるからです。
 それでは、このような混乱をどうすれば超克できるのでしょうか。人は心に「利他」や「自他」の考えを持っています。自己のこれまで愛されケアされてきたという幸せな経験と、努力不足であったという自省(自ら反省すること)の経験が、他者への思いである「利他」「自他」につながります。この「利他」や「自他」の考えを生かすことで、人や組織や社会は漸進し豊かになります。

「利他」「自他」の考えは複眼的で包括的な地方政治/地方自治につながる

 人は、「利他」「自他」の考えを持つことにより、複眼的思考を持つようになります。このことは、複眼的地方政治、複眼的地方自治につながります。すなわち、複眼的思考を通して「利他」「自他」の考えは、人や組織や社会の問題について、複数の問いと答えを生み出すことができ、そのことは強引さを避け、より包括的な視野を持つ地方政治、地方自治とつながります。これらのことを、次節において述べる自由な思索・話し合いの文化も含めて整理したのが図1です。
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出典:筆者作成
図1 複眼的で包括的な地方政治/地方自治への過程

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