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2024.06.25 議会運営

第93回 陳情の取扱いと除斥

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 さらに、平成30年11月12日名古屋高裁判決において、「陳情書が提出されても、原則として議会が審査等の対応をすることが義務付けられるものではないから、……趣旨は、陳情という形式であっても市民による政策提言として取り上げるのに適したものは、請願として取り扱うことを可能とすることにあると解される。したがって、本来、議会が審査等の対応をする義務のない陳情書を、本件規則……により請願の例により処理するかどうかの判断については、議長の広範な裁量権に委ねられているものと解するのが相当である」と判示されたことも要因であるといえる。

【市会議規則145条】
 議長は、陳情書又はこれに類するもので議長が必要があると認めるものは、請願書の例により処理するものとする。

 設問においては、改正前の市会議規則に規定された陳情等の内容が請願に適合するかどうか議長が判断することとなっていることから、そもそもこの請願の内容に適合するかどうかを議長が判断するに当たり議会運営委員会に諮問し、答申を受けることが陳情の審議の一環と考えるべきか疑義が生じる。
 会議規則における請願の内容に適合するかどうかという解釈については、一般的に各議会の議長の会議規則に対する解釈権の範囲であることから、①その解釈を陳情審議における一態様ととらえ、請願の内容に適合するかどうかから除斥の規定を働かせる考え、②陳情が請願の内容に適合するかどうかを単に議事手続の面からとらえ、陳情として請願と同様の取扱いにするかどうかという部分でとらえる考えの二つがあるといえる。
 ただし、一般的には改正前及び改正後の市会議規則の陳情等の請願書の例により処理するかどうかにおいて、議会運営委員会に諮問することは、②の単に議事手続の面から陳情等を審議するかどうかの前段階であると考え、議会の審議の一環とはいえないことから、当該陳情の内容がどのようなものであれ、議会運営委員会及び議長の判断において除斥の規定を適用する必要はないものと考える。
 また、市会議規則145条における議長の判断の前提となる議会運営委員会の諮問・答申は、地方自治法及び市会議規則で議長の判断の前提条件として規定されたものではなく、どの陳情等を議会運営委員会の諮問にするかどうかについては議長の専権であり、またその議会運営委員会の答申は議長に対し法的拘束力を有するものではないため、議会運営委員会の手続に瑕疵(かし)があったとしても議長は自らの判断に基づき判断すればよいだけであり、当該答申をもって違法な判断であるとすることはできないと解される。
 ゆえに、議長の設問における陳情等を請願の内容に適合しないとして議長預かりとし、請願と同様の議会の審議に供さないことは法的に問題がなく、当該申立てに対して特に法的に対応すべきものはないと考える。

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