2024.06.25 議会運営
第93回 陳情の取扱いと除斥
明治大学政治経済学部講師/株式会社廣瀬行政研究所代表取締役 廣瀬和彦
陳情の取扱いと除斥
議員に対する批判を主とする陳情が住民から提出された。その際、A議会では、会議規則に、議長が陳情で請願の内容に適合するものについては、請願の例により処理するものとすると規定していることから、議会運営委員会に請願の内容に適合する陳情であるかどうかの諮問をした。この際、陳情の内容に該当する議員が議会運営委員だったが、除斥をせず議会運営委員会で請願の内容に適合しない陳情として答申をし、議長が当該陳情を議長預かりとして特に議会での審議を必要としないと判断した。当該対応に、陳情者より議会運営委員会で陳情の内容に該当する委員を除斥しないで答申を出したことに基づき、議長が当該陳情を議長預かりとしたので、議長の取扱いは無効であるとの申立てがあった。この場合、どのように取り扱うべきであるか。
陳情とは、公の機関に対し、一定の事項を要望する事実上の行為をいい、住民の要望で請願を除いたものをいう。また、標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)145条で陳情に類するものとあるが、これは、陳情という名称ではないが、陳情の内容を一応整えている嘆願書や要望書、決議書等をいう。
地方議会への陳情に対する取扱いは、請願が地方自治法124条で規定されているのとは異なり、特に規定されていないことから、その取扱いは会議規則に委ねられる。
【地方自治法124条】
普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない。
ここで問題となっていたのは、市会議規則145条の議長が陳情等の内容が請願に適合すると判断される場合とはどのような場合をいうのかという解釈である。
非常に抽象的で分かりづらいことから、令和6年1月に全国市議会議長会は、標準会議規則等の改正等に関する検討会議において、「令和5年度標準市議会会議規則及び標準市議会委員会条例一部改正に関する報告書」を提出し、市会議規則145条において、陳情書又はこれに類するものを請願書の例により処理するとした要件である、陳情等の内容が「請願に適合するもの」から「議長が必要があると認めるもの」に変更した。
この理由としては、先述のとおり旧市会議規則145条におけるその内容が請願に適合するものという基準が曖昧であり、陳情の取扱いについて現場が苦慮することが想定されることが一つの要因であるといえる。