1 はじめに
地方議会における一般質問は、議員が、首長をはじめとする執行機関に対し、当該自治体の一般事務に関する疑問点に係る質問を行い、また、自己の意見を述べることができるという点で、議会による執行機関に対する監視機能の実現のために重要な機能を有しているといえる。
一方、議会会議規則には、議長の許可を得て一般質問ができるといったことのほか、関連する手続のような形式的事項が規定されているのが一般的であり、どのような観点から、どのように一般質問を組み立てるべきかといった実質的事項については、各議員の判断に委ねられている。
だからといって、思いつくままに質問をしていたのでは、執行機関から有益な回答が得られないおそれがある。なお、ここでいう「有益」というのは、質問をした「議員にとって」ではなく、あくまで「住民にとって」という意味である。
有益な回答を得る質問をするための手法には様々なものが考えられるだろうが、本稿では、そのうち、一般質問に係る質問事項を考える際に有用と思われる視点について述べることを主眼とする。
本稿の最後では、読者が一般質問を組み立てる際のヒントを提供する趣旨で、筆者が講師を務めた地方議員向けの「一般質問の組み立て方」セミナー(第一法規主催、2023年11月17日実施)において、受講者から寄せられた質問をいくつか取り上げ、当該質問を一般化した上で、Q&A方式によって筆者の回答を紹介することとしたい。
2 一般質問に有用な視点─政策的視点と法的視点─
(1)総論
一般質問に有用な視点は、大きく政策的視点と法的視点に分けられる。
まずは、筆者が有用と考えているこれらの視点について、結論部分を示しておく。
【政策的視点】
① 当該一般事務の執行が、住民の福祉の増進につながるのか?
② 当該一般事務に係る経費の支出は相当か?
③ 当該一般事務に係る財源をいかに確保するか?
【法的視点】
当該一般事務の施行は、法律(条例・規則等を含む)に従っているか?