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2024.05.27 政策研究

第50回 参照性(その1):比較

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住民による比較

 比較主体として、第1に、住民がありうる。住民の比較対象先の選定は、かなり興味深いメカニズムが作用する。単純に近隣・周辺自治体、同一県内自治体、類似団体、課題共有団体などと比較するとは限らない。住民が比較する先は、しばしば、その情報源の多様性によって、アドホックで属人的である。
 例えば、友人・知人や親戚・親族から、その人たちが体感している自治体と、自身の住んでいるなど知っている自治体との比較がなされる。このような情報交換は、「そっちの自治体では△△なんだ……」というように、結構、大きな印象を形成する。また、自身が引越をすることによって、「前の自治体では○○だったのに……」、「今のところは◎◎でよいな……」などという、具体的な比較対照がなされることがある。
 「足による投票」(連載第35回)は、引越の前の段階で、住民は様々に自治体の状況を比較対照し、その上で、合利的に居住先(引越先)を決定するという理論モデルである。実際、子育て施策が充実しているなどということを調べて、居住先を選択することはある。それは、自治体の施策のありようというよりは、自治体という地域の交通アクセス、地価、自然環境、災害などの様々な要因を含めた比較である。しかし、事前の下調べはなかなか十全のものにはならない。むしろ、引越の結果として、上記のような新旧自治体の比較が実感を持ってなされることになる。その場合には、今更再度の引越をすることは困難であるから、「足による投票」は機能せず、退出(exit)よりは発声(voice)の作用が強まる。
 住民にとっても、自治体を比較する情報集約や情報提供があれば、もっと容易に比較できる。こうしたメカニズムが、グロテスクなまでに肥大化したのが「ふるさと納税サイト」である。そこでは、インターネット通販よろしく、各自治体が提供する返礼品及び納付金額の比較が可能である。もっとも、自治体の施策を比較しているのではなく、提供「商品」を比較しているだけである。
 住民にとっては、実際の施策・事業・行政サービスを比較する情報があると、分かりやすい。例えば、子育てしやすいかは、特に共働き子育て世帯にとっては重要な関心事である。日経xwoman(クロス・ウーマン)と日本経済新聞社は「共働き子育てしやすい街ランキング2023」を公表している(1)。「今年も『自治体の子育て支援制度に関する調査』を全国180の自治体に送付し、157の回答を得ました。保育園、病児保育、学童保育の実態に加え、自治体内の女性活躍推進、男性の意識改革の取り組みなどについても調査。自治体が共働き世帯をどう支えているか、少子化問題にどう取り組んでいるかに切り込」む、ということである。比較対象は、首都圏・中京圏・関西圏の主要市区と全国の政令指定都市、県庁所在地、人口20万人以上の都市の計180自治体である。全国網羅的な調査ではないが、現実的な通勤圏を対象としていよう。それが点数化されてランキングされているので、量的比較になっている。
 施策は多面的であり、量的比較は、指標の択(と)り方や換算方法によっては、体感や世間相場・評判と合わないこともある。その場合には、質的比較することになるが、しばしば、施策・事業の羅列となり、住民の需要に合うメニューがあるかどうかが問われる。
 例えば、ナビナビ保険の「【全国版】子育てしやすい街を大公開!子育て世代にうれしい自治体独自の支援制度一覧」は、「子育て支援が充実している・ユニークな支援を行っている自治体を地方別にまとめて」紹介している(2)。例えば、葛飾区は、「葛飾区新生児特別定額給付金」=特別定額給付金の対象とならない2020年4月28日以降生まれの新生児1人につき10万円を給付する、「ゆりかご葛飾」=妊娠・出産・子育て支援事業として保健師や助産師との面接を経て最適なプランを作成してもらえるなどの支援事業を行っている、と紹介されている。

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