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2024.04.25 政策研究

第49回 固有性(その5):自治構想

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明示的な自治構想

 自治体の政策方針を、長期的・大局的に公式に決定することも可能である。この場合には、「百年の大計」のようなイメージで、明示的な自治構想が存在することになる。例えば、長期計画、戦略、長期ビジョンなど(以下「長期構想」という)として、計画政策文書をとりまとめることがある。長期構想は、自治体の大きな方針を長期的に示すものであって、首長任期4年を超えて、はるかに時間的に長い射程が想定されている。
 長期構想によって、策定当時の首長が退任しても、また、後継候補への禅譲ではなく、あからさまな政権交代があっても、後継首長を拘束することもありうる。こうした呪縛が、「直近の民意」を重視する民主的統制の観点からは、あるいは、首長のリーダーシップを期待する見方からは、疑問視されることもありえるだろう。もっとも、現実には、後継の現職首長を法的に拘束するものではない。後継首長が、こうした長期構想を無視して、全く別の政策方針で上書きすることもできる。つまり、後継首長たちが、その都度、継承すること、あるいは、更新しないことを選択することによって、長期構想は明示的な自治構想として延命する。
 例えば、西宮市は、1963年11月3日に、以下のように「文教住宅都市宣言」を発出している。

 西宮市は、阪神間の中央に位置し、自然の風光と温暖な気候に恵まれ、市制施行いらい、多くの人々がここに、平穏で快適な生活環境を求めて移り住み、ついに今日の隆盛をみるにいたった。その風土は、先覚者たちの文教諸施設の整備拡充の努力とあいまって、今や西宮市が文教住宅都市として力強く進むことを可能ならしめている。
 またその故にこそ、年々、万余を数える人口増加がみられるのである。
 一方、大阪、神戸をはじめとする阪神圏諸都市は、急速な発展を示しつつあるが、同時に産業配置、人口の都市集中、公害など幾多の内部的諸矛盾の解決をせまられている。こうした事態にあって、西宮市は、本市が誇りうる文教住宅都市的性格をさらに一層、推進することにより、こんごの阪神圏発展の一翼を担う考えである。すなわち、西宮市の将来は、西宮市民のみならず、近畿一円の福利の増進に役立つべきものであり、それはまさに、西宮市が、人々に憩いと安住の地を提供することによって、積極的に果されるものと信じる。
 ここに、西宮市は三十万市民のひとしく望むところにしたがい、風光の維持、環境の保全・浄化、文教の振興を図り、当市にふさわしい都市開発を行い、もって市民の福祉を増進するため、西宮市を「文教住宅都市」と定め、こんごの市政運営がこの理念に基づいて強く推進されるものであることを宣言する。(下線筆者)


 同宣言はすでに還暦を迎える古いものであるが、今日まで繰り返し継承・温故されている。例えば、「西宮市第5次総合計画」(2019年度~2028年度)でも、「未来を拓(ひら)く 文教住宅都市・西宮~憩い、学び、つながりのある美しいまち~」を都市目標としている。なお、同総合計画の記載から見れば、「文教住宅都市宣言」のほかに、「西宮市民憲章」(1970年11月3日)(2)、「平和非核都市宣言」(1983年12月10日)、「安全都市宣言」(1962年1月10日)・「市民生活の安全の推進に関する条例」(2000年4月1日)、「環境学習都市宣言」(2003年12月14日)などが並列されている。しかし、同計画「基本構想」の「これまでの総合計画とまちづくりの進展」において、「本市は『文教住宅都市』を基本理念とし、まちづくりを進めてきました」と明示され、その後は、5次にわたる総合計画が記載されており、「文教住宅都市」が大枠を定める長期構想であることがうかがえる(3)

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