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2024.04.25 政策研究

第49回 固有性(その5):自治構想

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東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之

自治体政策の不易流行性

 自治体政策は、自治体の直面する環境である地域実情の固有性や、地域実情を政策決定に変換する政治構造の固有性があれば、自治体独自の固有性を帯びることになろう。しかし、このような政策は、その時々の地域実情や政治情勢によって、変わりうるものである。また、情勢に適応して変化すべきものでもある。
 しかし、政策過程自体は、従前の政治構造を引き継ぐものであって、ある程度の継続性がある(第48回)。首長は選挙によって政権交代することがあり、それは実際にも、政策の方向性を大きく変えることがある。しかし、地域社会の住民が総入れ替えになっているわけでもなければ、各種の利益団体も変わっていない。したがって、政治構造を短期間で大きく変えることは困難であり、実際の政策は漸進的にしか変わらない。激変させようとすれば、むしろ、各種の利益団体や住民から拒否反応が出てしまい、しばしば反動的に復古してしまう。政治構造が大幅に変わらないため、政策決定される内容もある程度は継続的になる。
 また、地域実情も、短期間では大きく変化しない。その意味では、政策も短期的には似たようなものであるし、そもそも、政策決定から執行まではある程度の時間が必要であるので、短期的にコロコロと変化させること自体が無益である。もちろん、30年などの長期的には大きく変化することはある。例えば、いわゆる地方圏・過疎圏や郊外部ニュータウンでは、急速に人口減少や高齢化が進むこともある。また、産業構造の変化によって、工場閉鎖・移転により、かつての工場集積地が空き地になったり、都市近郊ではマンションなど住宅団地に生まれ変わったりする。このように地域事情が変われば、当然に政策の中身は変わらざるをえない。
 自治体政策は、短期的にも、長期的にも、大きく変わることもあれば、あまり変わらないこともある。このとき、ある自治体で長期的に政策内容や政策の方向性が変わらなければ、ある自治体には固有の政策が見いだされるかもしれない。このように、それぞれの時点の個々の政策を超えて、中長期的に自治体全体の個別政策を束ねるような内容について、ここでは、自治構想と定義してみよう。ある自治体を通時的に貫く自治構想が、その自治体に特有の固有性を帯びることがある。

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