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2024.04.25 政策研究

第9回 民主主義と議会④─結社、複数性、人権、応答性、マニフェスト、レジリエンス

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「結社、複数性、人権、応答性、マニフェスト、レジリエンス」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 「取り残されることへの恐れ」は人を「孤独」にさせ、孤独は人にも組織にも社会にも葛藤・差別・紛争(戦争)等の問題をもたらします。孤独の処方箋は、バラバラになった社会をつなぐ結社でした。
  2. 結社には、「親民主主義性のある結社」と「反(非)民主主義性のある結社」があり、政府(自治体・国)が結社と協議したり連携するときには、前者とのコミュニケーションに重きを置くことが求められます。
  3. 政治混乱の背景には、不適正な政治資金、汚職、選挙違反、違法行政見過ごし、忖度等の問題とその顕在化があります。
  4. 政治混乱を超克するためには、話し合いと行動が求められます。ただし、話し合いと行動には、時間とその調整が必要となります。
  5. 依存先が複数あれば、相対的に自由度が増えます(=支配と隷従から解き放たれます)。このことは、結社にも、インターネットやSNSにも当てはまります。なお、複数政党(会派)制は、議会における依存先(信託先)政党を選ぶ自由度が増えることを通して、民主主義の劣化防止機能を果たしうることを忘れてはなりません。
  6. SNS及び技術革新は、適正な利用で一定の効果を発揮するものの、他方では新たな問題を引き起こすことが予測されます。
  7. 技術革新には、人権が脅かされうること等の危うさがあります。
  8. 主張が異なる人の人権であっても守り、自由な発言を保障することが大切です。このことは、たとえ「相手の主張を納得することはできないとしても理解することはできる」という認識につながり、やがては、時間がかかるとしても平和で安寧な社会を形成することになるのではないでしょうか。
  9. 市民と議会・議員の関係においては、両者の間に認識のズレによる問題の漏れがないように互いに踏み込むことが大切ですが、場合によっては漏れがないよう留意しながら一歩引くことも求められます。一歩引くことで、相手に対して何が欠けているかを自分で気づき、相手にとって「応答性」のある双方向コミュニケーション(=話し合い)ができるからです。特に、議会・議員には応答技術のレベルアップが政策課題となります。
  10. どんな人も他者に依存せずには生きられない一方で、どんな人も他者のために貢献しているということがいえます。多様な人と人の関係が紡ぎ合わさることで、人や組織や社会が成り立っているといえます。このことは、「ゲットすることでギブしていること」といえます。これは、「みんなで教え合い、分かち合うことで様々な『技術』を、一人ひとりが喜びながら身につけていくことができる」という希望に根差した考えにつながります。
  11. 私たち(市民・議員)には、「マニフェストの限界」を踏まえつつも、有権者(市民)と議会・会派(政党)・議員の間の「政策」契約であるマニフェストの可能性に期待することが必要なのかもしれません。
  12. くじ引きにする場合も含めて選挙制度の再デザインの話は、結局のところ、現行制度の下で選ばれた議員に、その制度を変えることへのインセンティブを与えられないという問題に帰着します。このことを打破するためには、信念と勇気ある「市民と政治家(議員・首長)」の存在が求められます。信念と勇気ある「市民と政治家」には、制度改革の条件を整えるとともに、条件が整ったときにどのような手順で改革を行うかを、あらかじめ検討しておくことが政策課題となります。
  13. 信念と勇気ある「市民と政治家」は、社会にレジリエンス(回復力、弾力性、適応力)をもたらします。


■参考⽂献
◇秋吉貴雄(2015)「公共政策とは何か?」秋吉貴雄=伊藤修一郎=北山俊哉『公共政策学の基礎〈新版〉』有斐閣、25~45頁
◇宇野重規=若林恵(2023)『実験の民主主義─トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ』中央公論新社
◇松下圭⼀(1991)『政策型思考と政治』東京⼤学出版会

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