2024.04.25 政策研究
第9回 民主主義と議会④─結社、複数性、人権、応答性、マニフェスト、レジリエンス
技術革新のメリット・デメリット
SNSの利用は、ノートパソコン・スマートフォン・タブレット端末等のモバイル端末の普及とともに著しく広がっています。なぜなら、SNSを使うことは、情報の収集や時間の節約等に便利であり、利用者にとって効果をもたらすからです。ここでは、はじめに技術革新や情報社会においてSNSが機能するメリット・デメリットについて考えてみましょう。
表3からは全体として、SNSは適正な利用により一定の効果を発揮するものの、他方では新たな問題を引き起こすことが予測されます。
表3 技術革新や情報社会においてSNSが機能するメリット・デメリット
次に、対象を少し広げ、技術革新のメリット・デメリットを整理したいと思います(表4参照)。ここでは、技術革新には社会の向上に一定の成果をもたらすものの、他方では技術革新により新たに生ずる問題が少なくないことが予測できます。そこでは、技術革新のあり方や「政策の複雑性」の問題が改めて問われてくることになります。
表4 技術革新のメリット・デメリット
「人権を守る・認める」ための思考(考え方)──「納得できなくとも理解はできる」
前節では、技術革新のメリット・デメリットを考える中で、技術革新により人権が脅かされうること等の危うさも指摘しましたが、ここでいう技術には、人文科学、社会科学、自然科学というあらゆる分野の科学技術が含まれます。
ところで宇野は、自分の身内や仲間の権利を大切にしたいと思うのは人間の本性であるが、とはいっても、その直感にだけ従っていると、不条理な差別や抑圧が起きたり、戦争が起きたりして大変な思いをすることにもなるとしています。そこで、人権は最低限認めた方がよさそうだという合意をどうにかつくり、その合意を積み重ねることで近代社会は発展してきたといいます(宇野=若林 2023:136)。このことは、人権は最低限認めた方がよさそうだという合意による見方ですが、人権をもっと積極的に認めた方が互いの人・社会・国にとって幸せをもたらしてくれるという見方もありえます。
また若林は、オリヴァー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア(1841-1935年:法律家・裁判官)の言葉だったと思うのですが、「自由はあなたのためにあるのではなく、あなたと真反対の意見の人間のためにある」という一節を以前読んだことがあるといっています(宇野=若林 2023:136-137)。このホームズの言葉は、換言すれば「主張が異なる人の人権であっても守り、自由な発言を保障することが大切である」ということになります。このことは、たとえ「相手の主張を納得することはできないとしても理解することはできる」という認識につながり、やがては、時間がかかるとしても平和で安寧な社会を形成することになるのではないでしょうか。