2024.04.25 政策研究
第9回 民主主義と議会④─結社、複数性、人権、応答性、マニフェスト、レジリエンス
政治混乱を超克する話し合いと行動、SNSの複数性は人の自由度・健全性を生む
政治混乱を超克するためには、話し合いが必要となります。その話し合いでは、①自分をないことにして、相手の気持ちになって考え行動すること、②はじめは担当を決めず、問題を見つけた人・問題に気づいた人がまずは話し合い行動すること、③定期的に皆で話し合い行動することが求められます。
ただし、話し合いと行動には、時間とその調整が必要となります。時間には限りがあることから、インターネットの普及とともに、インターネットを活用した話し合いや行動が多く見られるようになっています。もっとも、インターネット情報には、フェイク情報や更新されずに古くなっている情報もあることから注意が必要です。このことは、情報の受け手であり、送り手でもある市民にも自治体政府(議会・行政)にも当てはまります。
また、SNSを通して流れる情報を全て把握することは困難ですし、たとえ的を絞った情報であろうとも見逃さないことは容易ではありません。さらにSNSは、生活に役立つということで始めた者が、従来の人間関係を壊したり、取込み詐欺・押込み強盗に利用されるなど、逆効果を発揮してしまうこともあります。車を運転しながらメールを扱っている人は、自分や他者の身の安全をおろそかにしているといえ、このことはいつか幸せを摘み取ってしまうでしょう。
宇野重規は、一つの依存先がなくなったら生きていけないとなると、ますますそれに依存せざるをえなくなることを指摘し、ひどい扱いを受けても依存先が一つしかなければ受け入れるしかなく、そこから支配と隷従が生まれてくるといいます。そして、依存そのものではなく、依存先の集中から問題が生じるとし、依存先が複数あれば、相対的に自由度が増える(=支配と隷従から解き放たれる)〔( )内は筆者補〕としています(宇野=若林 2023:272)。宇野のこの考えは、結社にも、インターネットやSNSにも当てはまります。なお、複数政党(会派)制は、議会における依存先(信託先)政党を選ぶ自由度が増えることを通して、民主主義の劣化防止機能を果たしうることを忘れてはなりません(図1参照)。
図1 時間・自由度と民主主義の関係