2024.04.10 まちづくり・地域づくり
第6回(最終回) シビックプライド(Civic Pride)の可能性
シビックプライドの測定方法
しばしば尋ねられる質問に、シビックプライドの測定方法があります。いくつかありますので、紹介します。大きく分けると、「居住意向調査」と「住民推奨調査」(ネットプロモータースコア)です。
前者の「居住意向調査」は、多くの自治体で実施されています。住民に対して「今後も市(町村)に住み続けたいか」や「市(町村)に愛着を持っているか」などの設問を用意して、これらの数値を集計して算出する手法です。直接的にシビックプライドの効果を住民に聞いています。これらの結果により、住民が生活している自治体に持つ愛着や誇りが明らかになるといわれています。シビックプライドを測定する指標として、よく使用されています。
ただし、筆者が既存のデータを確認すると、「今後も市(町村)に住み続けたい」という意向が高い自治体でも、転出者が多いケースがあります。
また、持家率が高い自治体ほど「今後も市(町村)に住み続けたい」意向が高くなる傾向も認められます。このような状況を(筆者は)「消極的シビックプライド」と称しています。すなわち「家を買ってしまったので、地域にとどまる……」という感じです。
後者の「住民推奨調査」(ネットプロモータースコア)は、民間企業において使用される調査手法です。例えば「0~10点で評価するとして、この企業(製品やサービス等)を友人や同僚に勧める可能性はどのくらいありますか」という質問です。この設問に対する回答を基に、点数(推奨度)を導き出します。
ネットプロモータースコアを高めることは、顧客ロイヤリティを強くするといわれています。顧客ロイヤリティの向上が企業の成長につながるとも指摘されます。顧客ロイヤリティとは、「継続的な商品の購入など、特定の企業や製品・サービスに対して持つ高い忠誠心」を意味します。
川崎市には、市民の愛着と誇りの醸成度を測る指標として「シビックプライド指標」があります。川崎市に「愛着を持っているか」や「住み続けたいか」など、複数の設問に回答を求め、結果を集計し数値を算出しています。同時に、市民の市外への推奨度を測る指標として「ネットプロモータースコア」も活用しています。具体的には「あなたは川崎市に住むことを友人、知人に勧めたいですか」や「あなたは川崎市に買い物・遊びなどで訪れることを友人・知人に勧めたいですか」という設問に対する比率を算出しています。
もう一つシビックプライドを測る指標があります。それは毎年(度)の住民の転出数で把握する方法です(転入数で把握する場合もあります)。転出数が減少すれば「シビックプライドが高まっている」と判断します。しかし、実態は必ずしもそうではありません。地域に愛着を持っていても、雇用がないため転出するケースがあります。
あるいは、Uターン(やJターン)を数値化し、これらの数字により、シビックプライドを測る場合もあります。Uターンの人口が増えれば「シビックプライドがある」と判断します。しかし、このケースも実態は必ずしもそうでない場合があります。地域には愛着がないけれど、離婚したため、あるいは親の介護のため、Uターンとして実家に戻るケースがあります。
ここでは、いくつかの視点からシビックプライドの測定方法を紹介しましたが、現在、検討中という感じです。