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2024.04.10 まちづくり・地域づくり

第6回(最終回) シビックプライド(Civic Pride)の可能性

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シビックプライドの効果

 シビックプライドの効果は、多方面から指摘されています。例えば「市民一人ひとりが感じる都市への誇りや愛着が行動として表出することで、まち全体のムードがつくられていく」効果があります(一般財団法人アジア太平洋研究所「水都大阪のシビックプライド」(2012年))。
 また「シビックプライドを進めることにより、点がいっぱい繋がり、線になり、線が面を作り、新しい活動、経済活動が生まれていく」効果もあります(経済産業省四国経済産業局「観光効果を活用した地域住民の地域に対する愛着と誇りと自負(シビックプライド)の醸成事業成果報告書」(2011年))。
 その他、学術研究の観点から、シビックプライドの効果として下記が指摘されています。
 ・防災活動に積極的に参加する
 ・継続居住意向を示す
 ・地域活動へ積極的に参加する意思(意識)が高まる
 ・町内会活動やまちづくり活動等の地域活動に熱心になる
 ・地域への責任感が強まる
 ・個々人の生活満足にプラスの効果が認められる
 ・NPO活動が活発化する
 ・出身者のUターン傾向が強まる  など
 筆者の調査によれば、継続居住意向は認められませんでした。一方で、NPO活動の活発化と、出身者のUターン傾向が強まることが分かりました。(人口を維持するという観点では)大学等への進学で一時期は地域を離れますが、どこかのタイミングでUターンする可能性があります。そのため筆者は、シビックプライドの醸成に取り組んだ方がよいと考えています(あくまでも人口を維持するという視点からです)。
 上記のシビックプライドの各効果は、個別具体的な事例を分析している傾向が強くなっています(事例研究が多いです)。その意味で、一般化されたものではありません。シビックプライドの効果を明確に把握するには(シビックプライドの効果が一般化されるには)、もう少し時間がかかりそうです。

シビックプライドはファンづくり

 ここ数年、筆者は自治体が取り組むシビックプライド政策の後方支援をしてきました(実践的に取り組んできました)。その中で得られた一つの結論は、「シビックプライドはファンづくりにつながる」です。この観点で考えると、シビックプライドはファンマーケティングに通じる部分があります。
 昨今、民間企業は「ファンマーケティング」(リレーションシップ・マーケティング)に力を入れています。ファンマーケティングとは、ファンづくりを目指すマーケティング戦略です。民間企業と顧客との間に強固な関係性を築くことにより、企業に多くのメリットをもたらします。例えば、顧客の継続購入をもたらします。あるいは、企業が商品やサービスを販売する中でも、顧客が高額な商品やサービスを選択する傾向が強まります。
 ファンマーケティングとは、民間企業と顧客との良好な関係づくりを通じて、企業と顧客の距離を縮めていくマーケティング手法を指します。
 本連載は相模原市を事例として取り上げました。相模原市がシビックプライド政策を進めることにより、同市の良い点(強み)を市民が知ることになります。その結果、相模原市に対する愛着や誇りが芽生えます。
 市民が相模原市の良さを認知すると、その良さを他者に伝えたくなります。これは「ウインザー効果(Windsor Effect)」(口コミ効果)といわれています。さらに、市民が相模原市の良い点を知ることは転出抑制にもつながるかもしれません。あるいは、進学等で相模原市を転出しても、Uターンとして戻ってくる可能性は高くなります(そのためには転出後も、市と転出者が「つながる」仕組みを構築することが求められます)。
 ウインザー効果は、「第三者(他者)を介した情報、うわさ話の方が、当事者が直接伝えるよりも影響が大きくなる心理効果」と定義されます。
 総務省の「住民基本台帳人口移動報告」を確認すると、2019年は上位20団体に相模原市は入らず圏外でした(政令市の中では下位に位置していました)。しかし、本村市長がシビックプライド政策を始めた時期から、相模原市は上位に位置しつつあります。2020年が18位、2021年が10位、2022年が12位となっています。
 もちろん、シビックプライド政策だけで人口けん引に影響を与えているとはいえませんが、シビックプライドの一つの成果と捉えることができます。

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