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2024.03.25 政策研究

第48回 固有性(その4):政治構造

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国の政策の地域適用

 国は、補完性や役割分担の観点からも、自治体ではできないような全国一律の政策決定を行うことがある。そのときには、地域実情の違いを、政策に反映する余地がないかもしれない。国の政策決定はYであって、地域1、地域2、……地域nであっても、変わりがないタイプである。この場合には、国が政策決定を全国画一的に行えば、地域実情に即さない政策決定が、全国画一的になされてしまう。全国共通・画一的な政策を目的にしているから、政策執行も全国共通となることが考えられ、そのときには地域実情に応じた政策出力は生じないかもしれない。
 もっとも、地域実情を反映できるような政策枠組(beleidskader)として、国が政策決定をすれば、全国画一的な政策執行にはならない。例えば、国が全国一律の健康保険の診療報酬を政策決定したとしても、地域での患者数には違いがあるから、結果的には、保険医療給付という政策出力には地域差が生じる。国が全国一律の生活保護基準を政策決定したとしても、地域での貧困・経済格差状況には違いがあるから、結果的には生活保護認定及び保護率という政策出力には地域差が生じる。この場合、政策執行の仕方──例えば、厳格な運用と寛大な運用の違い──が政策執務を担う現場組織──自治体を含む──ごとに異なっているという、事実上の政策執行組織レベルでの政策決定がなされているのではなく、完全に画一的な政策執行がなされているからこそ、保険医療給付や生活保護費支給に地域差が出るわけである。
 全国一律の政策Fの決定・執行であるがゆえに、地域ごとに患者数・医療費や生活保護認定・支給の差が出ることもある。この場合にも、
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である。Xとして、地域の高齢化率などが異なれば、そして、高齢者が保険医療を多く利用するのであれば、高齢化率の高い地域1の方が人口1人当たりの保険医療給付Yは、そうでない地域2のYより大きい。また、高齢者数の多い地域3の保険医療給付Yの方が、高齢者数の少ない地域4の保険医療給付Yより、絶対値では大きい。全国一律の政策であっても、いやむしろ、全国一律の政策決定・政策執行であるがゆえに、地域実情を反映できることもある。
 逆にいえば、地域実情が異なっているにもかかわらず、全国一律の政策出力を求めるときには、政策執行のあり方が、逆流的に地域ごとに異ならざるを得ない。例えば、高齢化率や経済状況が異なるにもかかわらず、人口1人当たりの保険医療給付や保険料率を、人為的政策的に同じ水準にしようとすれば、政策執行のあり方を変えざるを得ない。つまり、高齢化している地域や、経済水準の悪い地域では、給付を抑制するように、意図的な政策執行をせざるを得ない。端的にいえば、保険医療給付をさせないように、レセプト拒否(自由診療化)や医療機関・病床数の抑制・削減・統廃合、金銭的・交通的・時間的な受診アクセスの困難化、予防の推進、受診へのスティグマ付与など、何らかの対処が必要になる。
 これは、実質的に全国一律の政策決定を執行段階で否定することであり、事実上、地域ごとに政策決定がなされることを意味してしまう。全国一律の政策出力を達成するために、地域ごとに異なる事実上の政策決定をさせられる。もっとも、こうした政策決定の「多様」性は、国の政策によって外圧的に強要されたものであり、自治体の政策判断の固有性とは関わりのないものといえよう。

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