2024.03.25 まちづくり・地域づくり
第5回 パネルディスカッション 住民自治を実現するシビックプライドの可能性(後編)
大谷 ひたちなか市の戦略としては、知ってもらう、関わってもらう、そして発信する、発信したくなる、またそれを発信すると情報が来るから、さらに違う情報を知るという、このスパイラルを大きくしていって、経験の総和を大きくしていくという考え方で進めています。
また、コロナ禍において、テレワークにより、遠隔での仕事のあり方が進んできました。かつては住む場所を変えることは、仕事を変えることに直結したのですが、今は仕事を変えなくても住む場所を変えることが可能になりました。そうすると、若い頃は刺激の多い都心がいい、でも子育てするなら少し落ち着いたまちがいい、となり、人生のライフステージで住み方を変えていくことも起きてくると思います。
そのときに、「ひたちなか市はこういう価値がある」ということをしっかり伝えていけば、どこかで人生のフォーカスが、今までは合わなかったけれども、自分がこういう境遇になったときに、ひたちなか市にピントが合って定住する可能性もあると思います。そういう人たちに、しっかりと受入れができるように、ブランディングをしていくことが大切であると思っています。
以前、ひたちなか市で実施したシンポジウムで山崎亮先生が、「問いかけ方の技術」というものがあるのではないかといっていました。行政が市民と対話するときに、例えば図書館で、どのようなものが欲しいですか、と尋ねると、市民は予算に関係なく、あんなものが欲しい、こんなものが欲しいといってきます。そうしたときに、何が欲しいですかではなくて、あなたはこの場所で何をしたいですか、と問いかけると、市民は、私はこういう過ごし方がしたい、ああいうことをしたい、となります。
さらにいうと、市民に対して、あなたたちはこういうことがしたいんですね、でも、いきなりこの場所をつくったからってできないですよね、できるまでに何年間かありますから、違う場所でこの活動をやりませんか、という問いかけの中で、活動を先行させていくことにより、市民の関わり合いをつくっていくことが大事であると考えます。
問いかけ一つで、引き出せるもの、引き出せないもの、関係が離反するもの、若しくは包容できるもの、いろいろあると思います。そのあたりは市職員も含めて、問いかけの技術を高めていくような研修を行っていきたいと思っています。
大谷明(ひたちなか市長)