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2024.03.25 政策研究

第8回 民主主義と議会③─中間団体とSNS、投票率、不信、議員・議会に求められるもの、政党(会派)、権力分立

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で、意識すべきものとして、「民主主義と議会③─中間団体とSNS、投票率、不信、議員・議会に求められるもの、政党(会派)、権力分立」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 多くの中間団体は、政府と比べて一般的に政策資源(中間団体としての政策資源)である人・組織・資金・物資・権限・情報・時間が限られているという共通点があります。
  2. 中間団体とSNSは、互いの機能を発揮し、かつ互いの機能を制御することで、持ち味を活かすことができます。
  3. 有権者、政府内部アクター、マス・メディア関係者の間で、認識の欠如(認識のズレ(刑法でいう過失に相当)あるいは認識の軽視(刑法でいう故意に相当)によるアジェンダ設定に相違)があり、有権者の意向が決定につながりません。議会には、有権者、政府(議会・行政)内部アクター、マス・メディア関係者の間のアジェンダ設定に関心を持ち、有権者の意向が決定につながるよう努めることが政策課題となります。
  4. 認識の欠如から脱出するためには、個別具体の課題をアジェンダの上位に押し上げる要因が必要となりますが、その要因が、今起きているのだということを強く認識することが求められます。そのため、議会には長期的かつ鳥瞰的な視点を備えることが政策課題となります。
  5. 「人々の政府への不信」と「政府の失敗」の間には負のスパイラルが生じます。
  6. 「人を救うため」「広く人に役立つため」という意識が大切です。
  7. 信頼を維持し続けるためには、まずはコミュニケーションを図ることが肝要です。
  8. 議員・議会には、自ら市民に向けたアウトリーチをすることや、市民から声がかかれば市民の立場に立って真摯に受け止め、対応策を模索し行動することが求められます。
  9. 民主主義には、信用資源が必要です。
  10. 往々にして、市民の持つ「諦め」「煩わしい感覚」「慣れ」の存在により、政府(議会・行政)が本来果たすべき機能を低下させ、ときには忘れてしまっています。
  11. 一般的に信用を得る場合には、偏らないニュートラルな行動が求められます。
  12. 議会の効果(存在意義)を発揮するためには、議会が一番信用のないところに行って、意見交換会・議会報告会や市民との勉強会・研究会・現地視察等のアウトリーチをすることが重要です。これらのことが議会の政策課題となります。
  13. 議会の市民を守る立場からの政策判断の基本的事項(指針)として、「議会及び行政は、未知のことで危険が発生したり不利なことが生じうることを前提に政策を判断し、決定し、実施しなければならない」という項目を、議会基本条例に規定することが必要です。このことが議会の政策課題となります。
  14. 新人議員は老若男女を問わず、議会において既知に縛られない特権を持っています。
  15. 議員は、予定と実績が一つとなった「(仮称)活動表」をつくり、日々の活動を進めることが求められます。
  16. 議論(話し合い)を交わし、行動をともにする「横の連帯」(=「横議」と「横行」)という活動が求められています。
  17. 一つの価値観に染め上げられた社会は、個々人の創意工夫の余地が著しく制限されるので外部環境の変化に脆く、利己的な人、風変わりな人、他人とは違った発想や行動をとる人を許容しない社会は弱いのです。
  18. 違った方向の意見を出すことは簡単ではありませんが、このようなことをできる人がいて、社会にイノベーション(革新)が起きます。
  19. 政党には、もともと似た関心を持つ人々が集まることを利用し、その内部において政策課題と対応策を描き出す作業においてならば、熟議(話し合い)は可能であり、かつ有効なのです。
  20. 政治権力の行使を通じて公益が実現するには、政治権力を担いたい、使いたいと思っている複数の勢力(複数政党)があって、その勢力の間に競争関係をつくり出す必要があります。
  21. 政治勢力が相互に競争して、勝ったり負けたりを繰り返していく(政権交代)と、その過程を通じてバランスのとれた選択がなされます。
  22. 権力分立という「政府の組織原理」は、たとえ執政制度(日本であれば国の首相や自治体の首長の選任方法や退任方法)が変容するとしても維持されるべきものです。日本の自治制度でいえば、議会には二元代表制という権力分立を、守り・磨き上げることが常に政策課題となります。


■参考⽂献
◇伊藤修一郎(2015)「アジェンダ設定」秋吉貴雄=伊藤修一郎=北山俊哉『公共政策学の基礎〈新版〉』有斐閣
◇宇野重規(2022)『知識ゼロからわかる! そもそも民主主義ってなんですか?』東京新聞
◇NHKホームページ「戦後の衆院選投票率の推移」(https://www.nhk.or.jp/senkyo/database/shugiin/2021/turnout/〔2024年3月6日確認〕)
◇公益財団法人明るい選挙推進協議会(2022)『第49回衆議院議員総選挙全国意識調査─調査結果の概要─』(令和4年3月)(https://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/07/49syuishikichosa.pdf〔2024年3月3日確認〕)
◇厚生労働省(2022)「令和4年版厚生労働白書─社会保障を支える人材の確保─〔概要〕」(https://www.mhlw.go.jp/content/000988388.pdf〔2024年3月2日確認〕)
◇篠原一(2004)『市民の政治学─討議デモクラシーとは何か─』岩波新書
◇篠原一(2012)「若干の理論的考察」同『討議デモクラシーの挑戦』岩波書店、257-260頁
◇曽我謙悟(2022)『行政学〈新版〉』有斐閣
◇内閣府NPOホームページ「認証・認定数の遷移─認証・認定数の推移」(https://www.npo-homepage.go.jp/about/toukei-info/ninshou-seni〔2024年3月2日確認〕)
◇藤田省三(1975)『維新の精神』みすず書房
◇待鳥聡史(2018)『民主主義にとって政党とは何か─対立軸なき時代を考える─(セミナー・知を究める3)』ミネルヴァ書房
◇養老孟司=アルボムッレ・スマナサーラ=釈徹宗(2014)『無知の壁』サンガ
◇養老孟司=名越康文(2017)『「他人」の壁』SBクリエイティブ

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