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2024.03.25 政策研究

第8回 民主主義と議会③─中間団体とSNS、投票率、不信、議員・議会に求められるもの、政党(会派)、権力分立

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政党(会派)と民主主義、政党の競争関係の必要性と機能、権力分立という「政府の組織原理」

 ところで、政治が人間の営みである以上、間違った選択をしてしまう危険性はどの政治体制にもあります。(待鳥 2018:2)。その意味では、政治は我々市民を「一寸先は闇」の状態に置いています(待鳥 2018:10)。では、少しでも「闇」に陥らないための社会とは、どのようなものでしょうか。
 待鳥聡史は、社会を構成するすべての人、あるいはそこまでいかなくとも大多数が、すばらしい見識を持った真面目な人間になった場合、少しの外部ショックがあっただけで、社会はたちまち崩壊してしまうのではないかと心配しています。すなわら、一つの価値観に染め上げられた社会は、個々人の創意工夫の余地が著しく制限されるのだから、外部環境の変化に脆(もろ)いことは明らかだとし、利己的な人、風変わりな人、他人とは違った発想や行動をとる人を許容しない社会は弱いと述べています(待鳥 2018:6)。
 みんなが一つの方向で似た見解を繰り返しているときに、違った方向の意見を出すことは簡単ではありませんが、このようなことをできる人がいて、社会にイノベーション(革新)が起きると考えています。そして、政党(会派)をめぐる議論の展開は、異なる考え方の存在を許容するという意味での社会の多元性が持つ意味を、鮮やかに示すものだといえるかもしれないと述べています(待鳥 2018:18)。
 熟議民主主義を実際の政治制度として組み込むのは、なかなか容易ではありません。有権者が面倒くさがって話し合わないこともありますし、有権者がもともと持っている知識・能力・環境に差があることも否定できません。さらに、意思決定までの時間が有限であれば、納得できない人が残る段階でも決めなくてはならないわけですが、現実の政策課題で時間的制約がないものはむしろまれです。しかし、政党には、もともと似た関心を持つ人々が集まることを利用し、その内部において政策課題と対応策を描き出す作業においてならば、熟議は可能であり、かつ有効なのではないかと思われます(待鳥 2018:220)。もともと似た関心を持つ人々が政党に集まるのは、政党が待鳥のいう「利益媒介機能」「政策情報縮約機能」「政策情報伝達機能」(待鳥 2018:215)を持っているからです。
 そして、政治権力の行使を通じて公益が実現するには、政治権力を担いたい、使いたいと思っている複数の勢力があって、その勢力の間に競争関係をつくり出さなければいけません。その競争関係があって初めて、権力は適切に使われるようになります。(政治)勢力が相互に競争して、勝ったり負けたりを繰り返していくと、その過程を通じてバランスのとれた選択がなされます。だとすれば、過程全体を担おうとする勢力、すなわち政党は一つであるよりも複数である方が望ましく、かつ特定の勢力が政治権力を独占しない方が望ましい、ということになります(待鳥 2018:27)。
 そして待鳥は、ジェームズ・マディソン・ジュニア(アメリカの政治家、政治学者、第4代アメリカ合衆国大統領、アメリカ合衆国憲法の父)の新奇性は、政治勢力間の競争関係が、議会の上院と下院の関係、あるいは議会と大統領の関係に表現され、制度的に定式化されていることを重視したところにあるといっています。これがいわゆる権力分立による抑制と均衡の考え方です(待鳥 2018:26)。もちろん、日本の政治制度はアメリカの政治制度とは異なります。例えば、国(議院内閣制=一元代表制)と自治体(二元代表制)の制度も異なりますが、権力分立という「政府の組織原理」は、たとえ執政制度(日本であれば国の首相や自治体の首長の選任方法や退任方法)が変容するとしても維持されるべきものといえます。すなわち、自治体議会(地方議会)においては、二元代表制という権力分立を、守り・磨き上げることが常に求められます。

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