2024.02.26 政策研究
第47回 固有性(その3):歴史
東京大学大学院法学政治学研究科/公共政策大学院教授 金井利之
自治体の宣伝・説明としての歴史
前々回(第45回、2023年12月25日配信)では、自治体の固有性として地理を取り上げた。自治体職員は、地域外に出かけて講演や説明を行う場合には、自分の所属する自治体(ただし、これは団体・行政組織としての自治体)が、どのような自治体(ただし、しばしば、団体としての自治体から見れば環境である地域社会や住民団体としての自治体)であるかを説明して、宣伝することが普通である。このときに説明される項目の中で、歴史に触れることもある。
例えば、前々回に紹介した桐生市では、地理情報に加えて(1)、
④ 桐生の歴史は古く、市内からは縄文時代の石器・土器、住居跡が発掘され、なか でも千網谷戸遺跡から出た耳飾りは国の重要文化財に指定されています。 ⑤ 桐生の織物の起こりは古く、奈良時代のはじめには絹織物を朝廷に献上し、江戸 時代には「西の西陣、東の桐生」とうたわれ、織物の一大産地となりました。 ⑥ 織物産業の繁栄を今に伝える町並みがいたるところに残り、近代化遺産の宝庫と なっています。特に、天満宮地区と本町一、二丁目には、約400年前の土地の区画 (敷地割)に江戸後期から昭和初期に建てられた主屋や土蔵、ノコギリ屋根の工場 など、絹織物業に係わるさまざまな建造物が数多く残り、織物業で栄えた桐生の歴 史を今に伝えることから、国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されていま す。
(下線部筆者)
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などと自己紹介している。縄文時代・奈良時代・江戸時代・近代という歴史が語られている。縄文遺跡はともかくとして、中心的には、「今」につながる織物産業や、それに関わる産業遺産・建造物の由来である。
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