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2024.02.26 政策研究

第7回 民主主義と議会②─熟議、闘技、深まる民主主義、参加民主主義の条件、市民と歩む議会

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価))における発言で、意識すべきものとして、「民主主義と議会②─熟議、闘技、深まる民主主義、参加民主主義の条件、市民と歩む議会」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策が抽出されたように思います。

  1. 投票の前にみんなで情報を共有し、じっくりと議論する過程を入れてみようというのが、熟議民主主義の発想です。議論を丁寧にすることによって、投票結果が変わります。
  2. 熟議民主主義は、公開の討議の中で、多様な意見から公正な意思決定を行うための手続を重視し、そうした手続を経て得られた結論に正統性があると考えます(手続的正統性)。議会には、熟議するための規範(条例・マニュアル等)の作成とその実践が政策課題として求められます。
  3. 熟議には、一定の時間をかけること、特定の人々を恣意的な仕方で排除することがあってはならないこと、そしてファシリテートできる人の存在が求められます。議会には、優れたファシリテーターを確保しておくこととともに、議員自らもファシリテーターとなりうる素養を身につけることが政策課題として求められます。
  4. 熟議の参加者は平等であり、誰もが意見を述べ、議論を開始し、疑問を呈する機会を等しく持つことが求められます。
  5. 熟議モデルは、話し合いの「過程」を重視します。熟議の中で人々は、単に互いの主張をぶつけ合うだけではなく、むしろ主張や選好が根拠とする「理由」を討議の場に差し出し、他者による検証にさらすことが重要です。公開の下での検証に耐え、なおも妥当性を主張できる理由のみが認められ、人々と共有されることになります。
  6. 議会には決定しなければならないという制約(限界)があります。
  7. 熟議には「反省」ないし「反省性」が必要です。議会が熟議をしているといえるためには、どんな決定においても、政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)全般における「反省」ないし「反省性」を踏まえていることが求められます。
  8. 熟議には、「インフォーマルな熟議」「フォーマルな熟議〈Ⅰ〉」「フォーマルな意思決定の熟議〈Ⅱ〉」があります。このような熟議の過程を経て、議論が最終的な法や政策に反映されるとき、政治システムは正統性を調達することができ、民主社会はいっそう安定することになります。
  9. 和解や合意よりも対立や不和を重視し、それを民主主義の活力とみなす立場が闘技民主主義です。闘技モデルの最大の貢献の一つは、社会における敵対性と多元主義、そして偶然性(偶発性)が民主主義においては不可欠であると明示した点にあります。
  10. 熟議民主主義も闘技民主主義もともに完全なものではなく、むしろ両者が互いの持ち味を発揮することが必要です。今日では、熟議民主主義と闘技民主主義以外にも、様々な民主主義(デモクラシー)の議論が行われています。これらの議論は、「民主主義の多様性」と「民主主義の概念のゆらぎ」をもたらします。ただし、これらの民主主義(デモクラシー)についても万能ではなく様々な問題があります。熟議民主主義や闘技民主主義を含めて、どのような民主主義がいいのかという議論(話し合い)がさらに求められます。
  11. 参加には三つの機能(教育的な機能、個人が集団の決定を受け入れやすくする機能、共同体の統合的機能)があります。そして、参加民主主義の移行に当たっては、二つの条件(共同的な社会意識を備えた市民になること、社会的・経済的な不平等を縮小すること)をクリアする必要があります。これら三つの機能と二つの条件は、相互に関連しています。議会には、このことを理解し、より良い民主主義の実現にまい進することが政策課題となります。
  12. 市民や自治体政府(議会・行政)には、「誤解」「錯視」に陥らないことが求められます。
  13. 希望の明かりを目指し「市民と歩む議会」が求められます。
  14. 振り返り(反省)から「一歩前進する議会」が求められます。
  15. 〈市民の幸福〉と〈自治体政府(議会・行政)のレベルアップ〉を目指すことが、議会には求められます。
  16. 大きく急激に変容する社会は、安定した社会に比べて、確かな視座を置くことが難しくなります。それは言葉を変えていえば、今を生きる当事者にとって、未知の社会に突入する難しさを表しています。
  17. 起きる事象には、実証可能なものと実証不可能なものがありますが、まずは実証できることから始めることが、予測可能性を高めるという意味からも求められます。


■参考⽂献
◇宇野重規(2022)『知識ゼロからわかる! そもそも民主主義ってなんですか?』東京新聞
◇慶應義塾大学DP研究センターホームページ(https://keiodp.sfc.keio.ac.jp/〔2024年2月8日確認〕)
◇田村哲樹(2017)『熟議民主主義の困難』ナカニシヤ出版
◇山本圭(2021)『現代民主主義 指導者論から熟議、ポピュリズムまで』中央公論新社

 

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編集 者

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