2024.02.26 政策研究
第7回 民主主義と議会②─熟議、闘技、深まる民主主義、参加民主主義の条件、市民と歩む議会
「参加が果たす三つの機能」と「参加民主主義の移行に当たり求められる二つの条件」
さて山本は、ジャン・ジャック・ルソー(哲学者、政治哲学者)の『社会契約論』における「参加が果たす三つの機能」を紹介しています。①教育的な機能(私たちは、はじめから成熟した市民である必要はなく、参加を通じて、より優れた仕方で参加できるようになる)、②個人が集団の決定を受け入れやすくする機能(押しつけられた法よりも、制定に自ら参加した法であれば、誰しも納得した上で従うことができる)、③共同体の統合的機能[=コミュニティへの帰属感覚](参加は人々を社会に結びつけ、社会を真の共同体に発展させる)です(山本 2021:110)。
また、山本は、参加民主主義の移行に当たって次のように述べています。参加民主主義の移行に当たっては、二つの条件をクリアする必要があります。一つは、人々は単に消費者としてではなく、自らの潜在能力を開発し行使する、共同的な社会意識を備えた市民とならねばならないということです。そして、いま一つは、社会的・経済的な不平等を縮小する必要があるということです。この二つの条件は、どちらかが先に満たされるというよりも、両方が補いつつ漸次的に満たされていくものでしょう。つまり、政治参加の上昇によって社会的・経済的不平等が問題視されるようになり、今度は不平等の改善によってさらに政治参加が進むといった具合です。こうして、社会は次第に参加民主主義モデルへと移行できるとしています(山本 2021:120)。
これらのこと(「参加が果たす三つの機能」と「参加民主主義の移行に当たり求められる二つの条件」)を関連付けて筆者なりに考えると、次のようになります。すなわち、「参加が果たす三つの機能」である教育的な機能、個人が集団の決定を受け入れやすくする機能、共同体の統合的機能は、「参加民主主義の移行に当たり求められる二つの条件」として出現する市民が達成し備えるべきものであり、「参加民主主義の移行に当たり求められる二つの条件」のうちの不平等が縮小することは、「参加が果たす三つの機能」を促進することになるということです。議会も「参加が果たす機能」と「参加民主主義の移行に当たり求められる条件」の関連を認識し、より良い民主主義の実現にまい進することが求められます(図6参照)。
図6 「参加が果たす三つの機能」と「参加民主主義の移行に当たり求められる二つの条件」の関連