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2024.01.25 まちづくり・地域づくり

第1回 シビックプライド(Civic Pride)とは何か

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「シビックプライド」に注目する事例

 シビックプライドに注目する首長は多くいます。本連載で例示する相模原市やひたちなか市も該当します。
 阿部裕行・多摩市長の2018年度施政方針には、「住み続けたいまち。子育てしたいまち。老いを迎えても幸せを実感できるまち。いつまでも自分らしく、いきいきと暮らしていける多摩市を全国に発信し、市民の皆さんの『まちを愛する心=シビックプライド』を大切にしたまちづくりを進めます」と、シビックプライドの重要性を強調しています。
 広瀬栄・養父市長の2018年施政方針では、「養父市において、まちづくりの基礎となった農業を守ることは、地域の伝統を守り、地域への愛着と誇り(シビックプライド)を守ることとなり、地域の安らぎと安定感を醸し出すことにつながり、そして、移住・定住、企業進出を促すこととなります」と述べています。近年、シビックプライドに注目する首長はますます増加しています。
 シビックプライドが注目されていることは冒頭で言及しましたが、それは良い効果があると考えられているからです。
 足利市の「足利シティプロモーション基本方針」には、市民のシビックプライドの意識が高まれば、市外への転出も少なくなり、来訪者の中から定住を希望する人も出てくると記しています。
 伊賀市の「伊賀市シティプロモーション指針」では、シビックプライドの効果として、定住・Uターン人口の増加、参画意識の向上、市民による情報発信の増加を挙げています。さらに上田市の「上田市シティプロモーション推進指針」では、市民の地域への愛着の向上(シビックプライドの醸成)により、市民の定住志向の高まりと転出者の抑制が促進され、定住人口が増加すると記しています。
 今日では、少なくない自治体がシティプロモーションと関連して、シビックプライドの醸成を政策の一つに挙げています。シビックプライドの醸成は、定住人口の維持と増加に貢献すると捉えていることが理解できます。

シティプロモーションの3類型

 やや話はそれますが、筆者はシティプロモーションを大きく三つに類型化しています。それは、①アウタープロモーション、②インナープロモーション、③インターナルプロモーションです。
 アウタープロモーションとは、自治体の地域「外」に向けて当該自治体の特長を訴求していく活動です。その結果、住民の転入促進、交流人口や関係人口の増加、企業誘致等を目指します。
 インナープロモーションとは、自治体の地域「内」に向けて当該自治体の特長を訴求していく活動です。インナープロモーションは、郷土愛の高まりやシビックプライドの醸成を促進します。その結果、住民の転出抑制、Uターンの拡大等を目指します。
 インターナルプロモーションは、勤務する職員に対して当該自治体の特長を訴求していく活動です。その結果、職員のモチベーションアップ、離職の防止、庁内コミュニケーションの活発化等を目指します。
 かつてのシティプロモーションは、①のアウタープロモーションが中心でした。しかし、近年、②のインナープロモーションに軸足を移す自治体が増えつつあります。人口が減少する中でのアウタープロモーションは、なかなか成果が出ない現状があります。アウタープロモーションは、自治体間競争を激化させるため、最近では批判の的となっています。語弊がありますが、アウタープロモーションを批判することで、成果の上がらない自らの失敗を正当化しようとしているように、筆者は感じます。
 ちなみに、多くの自治体がインナープロモーションに参入しているため、シビックプライドに関しても激戦化しつつあります。今度はシビックプライドに関して、競争の激化という歴史が繰り返されることになりそうです。
 筆者は、インターナルプロモーションが重要と考えています。繰り返しになりますが、インターナルプロモーションとは「自治体に勤務する職員を顧客とみなして行われる啓発活動」です。スタッフプライドの醸成を目指す取組みともいえます。民間企業のインターナルコミュニケーションに類似した活動であり、組織内における広報活動です。
 近年、職員に対するプロモーションやコミュニケーションが希薄化しています。そのため組織としての一体感がなく、自治体全体の総力が低下しています。
 インターナルプロモーションに関して、筆者のゼミ生(大学院生)が全国の市を対象にアンケート調査を実施しました。良い成果が得られましたので、別の機会に言及したいと思います。

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