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2024.01.25 政策研究

第6回 民主主義と議会①─民主主義の目的、習熟、限界、現実

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結び

 本稿では、自治体議員の皆さんが政策過程(課題抽出、選択肢作成、決定、実施、評価)における発言で意識すべきものとして、「民主主義と議会①─民主主義の目的、習熟、限界、現実」と、これらに関する事項等について考えてきました。そこでは、次のような含意と政策(政策課題)が抽出されたように思います。

  1. 人は誤った情報に基づいて、非常に重大な意思決定をしてしまう可能性があります。
  2. 民主主義は完全なものではなく、常に一層の改善・工夫が必要です。この視点からは、政治家(議員や首長)やその補助機関(組織)である職員(自治体官僚)には、不断の革新が政策課題として求められてきます。
  3. 私たちには、民主主義に基づいて政策決定(政治)を行うことが求められてきます。
  4. 民主主義は、社会にある対立や矛盾を少しでも減少させ、人々を幸せな状態に近づけることが目的です。
  5. 「民主主義」の内容をある程度は具体的に共有することが重要であり、他方、民主主義といえない具体的事項を共有することも大切です。
  6. 代議制民主主義が自分たちを代表していないと感じれば、やがて代議制民主主義への関心は低くなります。そして、関心の下がった人は社会の一員だと思えなくなります。このことは、市民の気持ちが民主主義に悪影響を及ぼしているといえます。
  7. 代議制民主主義が自分たちを代表していると感じられれば、代議制民主主義への関心が高まり、関心の高まった人は社会の一員だと思えるようになります。このことは、市民の気持ちが民主主義に好影響を及ぼしているといえます。この視点からは、政治家(議員や首長)やその補助機関(組織)である職員(自治体官僚)には、市民の気持ちを考えるための具体策の形成・実施・評価・見直しが政策として求められてきます。もちろん、ポピュリズムに陥ってはいけません。
  8. 適正な参加であれば、これらの政治参加は社会に良い効果をもたらし、他方、適正でない参加であれば、これらの政治参加は社会に逆効果(=不安定要素)をもたらします。
  9. 民主主義に習熟するための「小さな実験」は、いくつかの「段階」と「見直し」から成り立っています。この視点からは、政治家や職員には、勇気を持って「小さな実験」を行うことが政策課題として求められています。
  10. 「無知のヴェール」は、「公正としての正義」を確保するためのものです。
  11. 現実の社会においては、「無知のヴェール」と「コミットメントの負荷」がせめぎ合っています。政治家や職員には、「無知のヴェール」が「コミットメントの負荷」に負けないようにするための具体的な方策が政策課題として求められます。
  12. 自由な社会では人々の価値観は一つに収斂せず、相異なったものであり続けます。
  13. 特定の価値観を強制することは必ず抑圧をもたらします。
  14. 民主主義社会の特長である「主権者の求める政治家・会派(政党)・政策が、正しい選挙により変わること」で、民主主義の可能性が生み出されます(高まります)。
  15. 政治家、職員、ジャーナリストが野蛮人と化し、大衆の意志を創造(ねつ造)しうるのです。
  16. 都合の悪い問題が争点化しないよう、あらかじめ封じ込める非決定権力は、反自由主義的、反民主主義的であるといえます。
  17. 市民運動を行う上では、①理念的であること、②マスコミとうまく付き合って世論をつくること、③アタマだけでなく、カラダが感じて動き出す運動を求められること、④理論的に事実を説明できること、⑤手短に説明できること、を要点として挙げることができます。
  18. 「民主主義がなくなって、初めて知った大切な民主主義」となってはいけません。
  19. 一度「弱い民主主義」状態になると、いつ「強い民主主義」状態に戻れるか分かりません。
  20. 「強い民主主義」状態を守る(形成する)ためには、基盤としての「民主主義の土壌づくり(堆肥づくり)」が求められます。そこでは、意識を変えることも必要となり、時間がかかることもありますが、それでも諦めないことが重要です。
  21. 市民は主権者であり、それ(政治)に物言わないでは、民主主義は成り立ちません。
  22. 「民主主義」と「自己内対話(情報過程)を含む話し合い」と「国際平和」は、連環しています。また、「国際平和」は「基本的人権の尊重」にもつながります。市民も政府(議会・行政)も、このことを改めて認識することが重要です。


■参考⽂献
◇宇野重規(2022)『知識ゼロからわかる! そもそも民主主義ってなんですか?』東京新聞
◇NHKホームページ(2017)「プロフェッショナル 仕事の流儀 アンコール2017年3月13日放送 それでも、海を信じている カキ養殖・畠山重篤」(https://www.nhk.or.jp/professional/2017/0313/index.html〔2024年1月6日確認〕)
◇國分功一郎(2013)『来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題』幻冬舎
◇齋藤純一=田中将人(2021)『ジョン・ロールズ 社会正義の探究者』中央公論新社
◇篠原一(2012)「若干の理論的考察」篠原一編『討議デモクラシーの挑戦』岩波書店、233~256頁
◇山本圭(2021)『現代民主主義 指導者論から熟議、ポピュリズムまで』中央公論新社

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編集 者

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