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2024.01.25 政策研究

第6回 民主主義と議会①─民主主義の目的、習熟、限界、現実

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失って気づくのでは遅い! 「強い民主主義」状態と「弱い民主主義」状態

 さて、「逢えなくなって 初めて知った 海より深い恋ごころ」で始まる『再会』(松尾和子(歌)・佐伯孝夫(作詞)・吉田正(作曲)、1960年)という曲がありますが、「民主主義がなくなって、初めて知った大切な民主主義」となってはいけません。このことは、20世紀初めから、間もなく4半世紀を迎えようとする21世紀の今日まで、前節において述べたような世界・日本の歴史を見れば明らかです。
 「強い民主主義」状態(表6参照)が消え、「弱い民主主義」状態(表7参照)が人々を囲む社会になると、次第に市民一人ひとりの倫理観が地に落ち、どうしても差別・格差・暴力・貧困・憎しみ・苦しみ・沈黙・無気力を生み出してしまいがちになります。一度「弱い民主主義」状態になると、いつ「強い民主主義」状態に戻れるか分かりません。だからこそ、「強い民主主義」状態を守ることが肝要です。そのためには、少なくとも政権交代がありえ、議員の選挙がある、どちらかといえば辛うじて「強い民主主義」の範疇(はんちゅう)に入るであろう(入ると思いたい)今日(2024年1月)の日本の民主主義を守ることが求められます。ただし、改善・改革が必要なことは、いうまでもありません。望ましい改善・改革のためには、民主主義の歴史を振り返り、具体的に考えることが大切です。
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表6 「強い民主主義」状態(例)

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表7 「弱い民主主義」状態(例)

 では、「強い民主主義」状態を守るためには、何が求められるのでしょうか。畠山重篤(NPO法人森は海の恋人の理事長)は「森は海の恋人」という言葉で知られています(NHKホームページ)。魚介類が豊かな海の漁師が海を豊かにするために、海に注ぐ川の流れる奥山に苗木を毎年植える活動は広がりを見せています。「強い民主主義」状態を守り、回復するためには、このこと(漁師が海に注ぐ川の流れる奥山に苗木を毎年植える活動)と同じように、基盤としての「民主主義の土壌づくり(堆肥づくり)」が求められます。そこでは、意識を変えることも必要となり、時間がかかることもありますが、それでも諦めないことが重要です。

話し合い(討議)の特色と目的、意見変容のタイミング

 ところで、篠原一がいうように、政治に関しては、そもそも市民は主権者であり、それ(政治)に物言わないでは、民主主義は成り立たないのではないでしょうか(篠原 2012:258)。また、情報の収集と討議によって、市民の意見が変更されるところに討議の特色があるといわれています。さらに、制度(討議)の目的は、意見の変容そのものにあるのではなく、討議によって、熟慮された、より確かな意見がつくられることにあるとされています。そして、情報を集め、意見を交換しているうちに、プロの政治家やマスコミ(実際には、「偽プロ(偽物)の政治家」や「偽プロ(偽物)のマスコミ」「偽プロ(偽物)のジャーナリト」〔( )内は筆者補〕)によって植えつけられている偏見から脱却することもしばしば見受けられるといいます(篠原 2012:243-244)。
 では、より詳細に見て意見変容のタイミングは、どこにあるのでしょうか。篠原は、「自己内対話」とも呼ばれる「情報過程(討議前の情報を仕入れる講義や現地視察のタイミング)」においての意見変容が、「討議過程」における意見変容よりも多くあるとしていることを紹介しています(篠原 2012:251-253)。また、篠原は、討議デモクラシー(熟議デモクラシー)〔( )内、筆者補〕は、万能とは程遠いものであるけれども、民主主義と国際平和のための一助になりうるといっています(篠原 2012:255)。
 このように、「民主主義」と「自己内対話(情報過程)を含む話し合い」と「国際平和」は、連環しているのです。また、「国際平和」は「基本的人権の尊重」にもつながります。市民も政府(議会・行政)も、このことを改めて認識することが重要です。

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